痛快無比なベートーヴェン! 10年以上共演してきた世界的名手のデュオは、尋常でない完成度と面白さ。最新の校訂譜を用い、歴史的奏法の詳細な研究をふまえながら、堅苦しさは欠片もない。1拍たりともルーティンにならず、多彩な技巧も駆使してライブセッション感満点。特に「クロイツェル」は鮮烈そのもの。フェルマータの即興は各回大胆で愉しさ抜群、両者の衝突と共鳴の応酬はひたすら圧巻で、ベートーヴェン演奏のひとつの神髄を聴く思い。刺激的だが奏者のエゴやエキセントリックとは違い、楽曲の魅力のみが抉り出される。夢中で“名曲”を聴ける、望外の喜び。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2026年3月号より)
【information】
CD『ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ「春」「クロイツェル」 他/アリョーナ・バーエワ&ヴァディム・ホロデンコ』
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5番「春」、同第9番「クロイツェル」、同第3番
アリョーナ・バーエワ(ヴァイオリン)
ヴァディム・ホロデンコ(ピアノ)
Alpha Classics/ナクソス・ジャパン
NYCX-10572 ¥3520(税込)

林 昌英 Masahide Hayashi
出版社勤務を経て、音楽誌制作と執筆に携わり、現在はフリーライターとして活動。「ぶらあぼ」等の音楽誌、Webメディア、コンサートプログラム等に記事を寄稿。オーケストラと室内楽(主に弦楽四重奏)を中心に執筆・取材を重ねる。40代で桐朋学園大学カレッジ・ディプロマ・コース音楽学専攻に学び、2020年修了、研究テーマはショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲。アマチュア弦楽器奏者として、ショスタコーヴィチの交響曲と弦楽四重奏曲の両全曲演奏を達成。



