【SACD】ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ全集/前橋汀子

 2022年に演奏家活動60周年を迎えた日本を代表するヴァイオリニストが録音した初(第3番のみ2度目)のブラームス・ソナタ全集。もちろんベテランならではの円熟味を加えた豊潤さやロマンの香りが横溢した演奏ではあるのだが、驚かされるのが、燃えたぎる情熱と勢いや力強さを大いに感じさせる点。これらもブラームスの音楽の特質とはいえ、その意欲的な表現は目を見張らせる。中でも表情の変化が鮮やかな第3番は聴きもの。第2楽章の深い歌にはとりわけ惹きつけられる。共演を重ねているマルディロシアンのピアノも前橋を盛り立てながら雄弁に語る。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2026年3月号より)

【information】
SACD『ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ全集/前橋汀子』

ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」~第3番

前橋汀子(ヴァイオリン)
ヴァハン・マルディロシアン(ピアノ)

ソニーミュージック
SICC 19090 ¥3300(税込)