
佐渡裕が新日本フィルの音楽監督に就いて3シーズン目。オーケストラに並々ならぬ活力を与え、聴衆の増加にも大きく貢献してきた佐渡が、そのシーズン最後となる演奏会で取り上げるのは、マーラーの交響曲第6番「悲劇的」だ。
古典的な構成に根ざしつつも、綿密な筋書きによって悲劇的な結末を導くこのシンフォニー。生や死、喜びや悲しみなど、相反する要素が激しく入り乱れ、強烈なドラマトゥルギーの渦を作り出す。さらに、限界まで拡大した編成ながら、緻密なオーケストレーションも魅力的だ。佐渡と新日本フィルがこれまで積み上げてきた成果が、この大曲で発揮されるとも言っていいのではないか。
マーラーを得意としたバーンスタインに師事した佐渡。この交響曲第6番を巡っての思い出も深い。師匠が振ったマーラーの交響曲のなかで、佐渡がアシスタントとして関わったことがあるのはこの曲だけだというのだ。バーンスタインは、終楽章でハンマーを3度叩かせる稿を選んだ(多くの指揮者は2度叩く稿を使う)。その弟子も、また「マーラーの死」を意味するといわれる3回目のハンマーを響かせる。
さらに、この交響曲は、1990年9月に佐渡が新日本フィル定期で初めて指揮したときの曲でもあるという。この音楽監督にとって縁の深い曲、持ち前の豊かなサウンドをホール全体に響かせてくれるに違いない。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2026年2月号より)
佐渡 裕(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団 第668回 定期演奏会
〈トリフォニーホール・シリーズ〉
2026.3/21(土)14:00 すみだトリフォニーホール
〈サントリーホール・シリーズ〉
2026.3/22(日)14:00 サントリーホール
問:新日本フィルチケットボックス03-5610-3815
https://www.njp.or.jp

鈴木淳史 Atsufumi Suzuki
雑文家/音楽批評。1970年山形県寒河江市生まれ。著書に『クラシック悪魔の辞典』『背徳のクラシック・ガイド』『愛と幻想のクラシック』『占いの力』(以上、洋泉社) 『「電車男」は誰なのか』(中央公論新社)『チラシで楽しむクラシック』(双葉社)『クラシックは斜めに聴け!』(青弓社)ほか。共著に『村上春樹の100曲』(立東舎)などがある。
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