【CD】沈黙の音楽/マルティン・ガルシア・ガルシア

 2021年ショパン国際ピアノコンクールで第3位に輝き、一躍その名を知らしめたガルシア・ガルシアだが、その前年、パンデミック下のニューヨークで、彼は静謐なピアノ小品集を作曲していた。「アブストラクト集」と名付けられたその作品群は、ガルシアの作曲家としての横顔を鮮やかに示す。温かさの中に緊張を宿す〈停止状態で〉、不協和音程の張り詰めた美しさが印象的な〈沈黙の後奏〉など、憂いと微笑みとが交錯するような音楽だ。カップリングには、彼が敬愛してやまないモンポウの「沈黙の音楽」(抜粋)を収録。語りと歌を往還するようなその美音に、じっくりと耳を澄ませてほしい。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2026年1月号より)

【information】
CD『沈黙の音楽/マルティン・ガルシア・ガルシア』

マルティン・ガルシア・ガルシア:「アブストラクト集」op.1より/モンポウ:「沈黙の音楽」より

マルティン・ガルシア・ガルシア(ピアノ)

Prima Classic/東京エムプラス
PRIMA 065S ¥オープン価格


飯田有抄 Arisa Iida(クラシック音楽ファシリテーター)

音楽専門誌、書籍、楽譜、CD、コンサートプログラム、ウェブマガジン等に執筆、市民講座講師、音楽イベントの司会等に従事する。著書に「ブルクミュラー25の不思議〜なぜこんなにも愛されるのか」「クラシック音楽への招待 子どものための50のとびら」(音楽之友社)等がある。公益財団法人福田靖子賞基金理事。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Macquarie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。