濃密な演奏でブラームスの神髄に触れる
昨年、東京フィルの創立100周年ワールドツアーで指揮を務めた大植英次。ニューヨーク、マドリード、パリ、ロンドン、シンガポール、バンコクを巡る大ツアーの成功によって一段と結びつきを深めたコンビが、この9月、東京でブラームスの交響曲第3番と第4番を披露する。大植英次と東京フィルによるブラームスは、2011年の交響曲第1番、14年7月の第2番に続くもの。今回の第3番と第4番で交響曲全曲演奏の掉尾を飾る。
ブラームスの交響曲といえば、どの曲をとってもドイツ音楽の真髄ともいうべき傑作ばかりだが、作品の成熟度という点では、この2曲の組合せほど魅力的なプログラムはないだろう。ブラームスの創作史をたどると、1876年に完成された交響曲第1番、そのすぐ翌年に書かれた第2番と、それから6年間を経て83年に作曲された第3番、翌84年から85年にかけて書かれた第4番といったように、前後半で2曲ずつに分けることができる。後半の2曲はともに洗練された書法のなかに深い憂愁や寂寞とした詩情を漂わせ、熱狂と興奮のなかにも常にしみじみとしたロマン的情感を横溢させる。
マエストロ大植のこと、濃密で起伏に富んだ音楽によって作品の魅力を十全に伝えてくれることだろう。オーケストラが鋭敏にその指揮ぶりに反応してくれることはまちがいない。これ以上はない傑作と、信頼関係を築きあげた指揮者とオーケストラ。記憶に残る名演が生まれる条件はそろっている。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年9月号から)
第869回 オーチャード定期演奏会
9/22(火・休)15:00 Bunkamuraオーチャードホール
問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522
http://www.tpo.or.jp