ワルシャワのフィルハーモニーで開催中の第19回ショパン国際ピアノコンクールは、第2次予選の審査が現地時間10月9日から12日の4日間にわたって行われ、12日深夜(日本時間13日午前6時過ぎ)に通過者20名の名前が発表された。日本勢では、桑原志織・進藤実優・牛田智大の3名が3次進出を果たした。

◎3次予選進出者 アルファベット順
Piotr Alexewicz ピオトル・アレクセヴィチ(ポーランド)
Kevin Chen ケヴィン・チェン(カナダ)
Yang (Jack) Gao ガオ・ヤン(ジャック)(中国)
Eric Guo エリック・グオ(カナダ)
David Khrikuli ダヴィド・フリクリ(ジョージア)
Shiori Kuwahara 桑原志織(日本)
Hyo Lee イ・ヒョ(韓国)
Hyuk Lee イ・ヒョク(韓国)
Tianyou Li リ・ティエンヨウ(中国)
Xiaoxuan Li リ・ シャオシュエン(中国)
Eric Lu エリック・ルー(アメリカ)
Tianyao Lyu リュー・ティエンヤオ(中国)
Vincent Ong ヴィンセント・オン(マレーシア)
Piotr Pawlak ピオトル・パヴラック(ポーランド)
Yehuda Prokopowicz イェフダ・プロコポヴィチ(ポーランド)
Miyu Shindo 進藤実優(日本)
Tomoharu Ushida 牛田智大(日本)
Zitong Wang ワン・ズートン(中国)
Yifan Wu ウー・イーファン(中国)
William Yang ウィリアム・ヤン(アメリカ)
※カタカナ表記は編集部作成。それぞれの言語の標準的なルールに則っていますが、実際の発音は異なる場合があります。
1次予選を通過した40名のピアニストがそれぞれ40〜50分のプログラムを組んだ2次予選。このラウンドでは、「24の前奏曲」op.28のうちの6曲セットを弾くことが求められたが、自由曲の枠で24曲すべてを選ぶことも可能だったため、まず、そこで全曲演奏を選ぶかどうかが、プログラム全体の構成に大きく影響することになった。それぞれが自身の特性を踏まえた選曲で、聴き応えのあるステージが続いた。
中国勢は、ティーンエイジャーの活躍が印象的だった。自然体でのびのびとした弾きっぷりで聴衆を魅了したTianyao Lyuは、ポーランドで今回の審査員でもあるカタジーナ・ポポヴァ=ズィドロンに学ぶ16歳。また、いずれも3次予選進出はならなかったが、抜群のテクニックで、ラン・ランを彷彿とさせる雰囲気のZhexiang Li(19歳)、前奏曲集で惜しくもミスがあったものの、抜群のリズムと鮮やかなタッチで完成度の高い演奏を聴かせたZihan Jin(16歳)など、新たな才能が続々と現れる同国の勢いを感じさせた。韓国のイ・ヒョ&イ・ヒョク兄弟は、揃って3次予選進出。地元の熱い期待に応えたポーランド勢は3名が残ったが、それ以外のヨーロッパのピアニストたちはここで姿を消すことに(ジョージアを西アジアとする場合)。
また、ケヴィン・チェン(カナダ)、エリック・ルー(アメリカ)など開幕前から前評判の高かったピアニストが順当に通過する一方、前回ファイナリストのラオ・ハオ(中国)、今年のヴァン・クライバーンでファイナリストとなっていた実力者、フィリップ・リノフ(中立個人参加)は通過ならず。今回の大会のレベルの高さを物語る展開となった。

日本勢5名も、それぞれに持ち味を存分に発揮し、強い印象を残した。桑原志織は、舟歌での繊細なタッチから、幻想曲や英雄ポロネーズでの骨太なサウンドまで、ダイナミックで説得力のある演奏で、ひときわ長い拍手を浴びた。聴衆を惹きつける様子が配信の画面からも伝わってくる。

ひときわ高い集中力を見せたのは進藤実優。前奏曲集全曲では、個々の楽曲のキャラクターを巧みに描き分け、彼女ならではの世界観を情感豊かに聴かせた。牛田智大は、マズルカ風ロンドで軽やかで研ぎ澄まされたタッチで調子を徐々につかみ、ソナタ第2番、前奏曲集からの抜粋、英雄ポロネーズで、正統派のピアニストとしての本領を発揮。

いずれも、前奏曲全曲と英雄ポロネーズを選択した中川優芽花と山縣美季は、それぞれにキャラクターの異なる24曲のプレリュードを繊細かつ劇的に表現。中川の瑞々しい感性と滋味深いカンタービレ、山縣の優美なサウンドが十分に生かされた長編のドラマだった。第24曲ラストの渾身のD音3連発は、多くの人々の記憶に残ることだろう。


なお、今年の採点方法は、25点満点で点数をつけ、平均をとるやり方(極端な点数がある場合には補正ルールあり)だが、3次予選進出者を決めるにあたっては、1次予選30%、2次予選70%の配分による累積点で決定されている。もちろん、より後ろのラウンドのほうが比重は高くなるが、過去のラウンドの出来が影響してくるのは、このあと最終結果まで変わらない。各審査員の採点結果はコンクール終了後に公表されることになっているが、甲乙つけがたい演奏が続いたこの2次予選の結果は、おそらくかなりの僅差の勝負だったのではないだろうか。
3次予選は、1日の休養日をはさみ、10月14日から16日までの3日間。今度は、アルファベットFからのスタート。一人45~55分のステージで、課題曲はソナタ第2番または第3番、指定された作品番号のマズルカ、そのほか任意の自由曲となっている。
文:編集部
第19回ショパン国際ピアノコンクール
2025.10/2(木)〜10/23(木) 会場:ワルシャワ・フィルハーモニー
◎第3次予選 10/14(火)〜10/16(木)
モーニング・セッション 10:00(日本時間17:00) イヴニング・セッション17:00(日本時間 24:00)
◎本選 10/18(土)〜10/20(月)18:00(日本時間 翌日1:00)
◎入賞者披露演奏会 10/21(火)〜10/23(木)各日19:00(日本時間翌日2:00)
https://chopincompetition.pl
【Information】
第19回ショパン国際ピアノ・コンクール2025 優勝者リサイタル
2025.12/15(月)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
2025.12/16(火)19:00 東京芸術劇場 コンサートホール
第19回ショパン国際ピアノ・コンクール 2025 入賞者ガラ・コンサート
2026.1/27(火)、1/28(水)18:00 東京芸術劇場 コンサートホール
2026.1/31(土)13:30 愛知県芸術劇場 コンサートホール
出演
第19回ショパン国際ピアノ・コンクール入賞者(複数名)、アンドレイ・ボレイコ(指揮)、ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団
他公演
2026.1/22(木) 熊本県立劇場 コンサートホール(096-363-2233)
2026.1/23(金) 福岡シンフォニーホール(092-725-9112)
2026.1/24(土)大阪/ザ・シンフォニーホール(ABCチケットインフォメーション06-6453-6000)
2026.1/25(日) 京都コンサートホール(ABCチケットインフォメーション06-6453-6000)
2026.1/29(木) ミューザ川崎シンフォニーホール(神奈川芸術協会045-453-5080)





