面白いタイトルだが、テレマンのカノン・ソナタを中心に、16世紀のルッフォ、ウッドソンからJ.S.バッハ、ドルネルを経てヒンデミットと桑原ゆうに至る、カノンなど対位法を用いたゲーム/遊び的楽曲を集めた内容。遊びと言っても高度な知的遊戯—ただし解放としての—がイメージされ、解説ではジャンケレヴィッチやエーコ、カイヨワらの「遊び」論が言及される。とはいえ構えは無用、冒頭のテレマンから田中せい子とブラジェッティの生き生きと精度の高いやりとりが飛び出してくる。活動30年以上に及ぶデュオが仲間を加え、達人たちの遊戯を繰り広げる愉悦の時間。最後の桑原ゆう作品にびっくり!
文:矢澤孝樹
(ぶらあぼ2025年10月号より)
【information】
CD『ゲームズ~テレマンのカノン・ソナタをめぐるリコーダーの「遊び」/田中せい子&ダニエレ・ブラジェッティ 他』
テレマン:「6つのカノン・ソナタ」より/ルッフォ:「3声のカプリッチョ」より/ヒンデミット:プレーン音楽祭「夕べの音楽」より/J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲の主題に基づく14のカノンより/桑原ゆう:「四つの遊び」より 他
田中せい子 ダニエレ・ブラジェッティ 高橋明日香 宇治川朝政 浅井愛(以上リコーダー)
録音研究室(レック・ラボ)
NIKU-9070 ¥3080(税込)

矢澤孝樹 Takaki Yazawa
1969年山梨県塩山市(現・甲州市)生。慶應義塾大学文学部卒。水戸芸術館音楽部門主任学芸員を経て現在ニューロン製菓(株)及び(株)アンデ代表取締役社長。並行して音楽評論活動を行い、『レコード芸術online』『音楽の友』『モーストリークラシック』『ぶらあぼ』『CDジャーナル』にレギュラー執筆。朝日新聞クラシックCD評選者および執筆者。CD及び演奏会解説多数。著書に『マタイ受難曲』(音楽之友社)。ほか共著多数。



