
右:ロバート・マクダフィー
10月の新日本フィル定期は、久石譲が本領を発揮するプログラム。人気作曲家・久石は、英国ロイヤル・フィルにポストを持ち、日本センチュリー響の音楽監督に就任するなど、近年軸足をクラシック畑に置いている。7月にはロイヤル・フィルの日本公演でも快演を展開。関係の深い新日本フィルで様々な楽曲を披露しているのも周知の通りだ。
そして今回ついに、久石の作曲のベースであるミニマル・ミュージックの大御所で親交もあるフィリップ・グラスの作品が演奏される。演目のヴァイオリン協奏曲第2番「アメリカン・フォー・シーズンズ」は、ヴィヴァルディの「四季」をモダンに変換させたような快作。しかもソロを弾くのが、この曲の委嘱者で2009年に初演した硬軟自在の名手ロバート・マクダフィーである点が期待を倍化させる。彼は同曲を世界中で100回以上演奏しているとの由。本作には4楽章の合間に無伴奏ソロ曲が配置されているので、独奏への注目度はすこぶる高い。加えてこの曲、どの楽章がどの季節なのか?の解釈がリスナーに委ねられている。ゆえにレアな本作が理想的な顔ぶれによって演奏されるとなれば、ぜひとも体験しておきたい。
もう1つはストラヴィンスキーの「火の鳥」組曲(1945年版)。久石は、複数の楽団で「春の祭典」の鮮烈な演奏を聴かせるなど、この20世紀の大家にも造詣が深いし、お馴染みの1919年版より精妙な音楽が多い1945年版ならば、作曲家の視点で清新な音楽を創造する彼の持ち味がより効果を上げるに違いない。かように今回は鮮度の高い音楽を満喫できる公演だ。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2025年9月号より)
久石 譲(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団 第666回 定期演奏会
〈トリフォニーホール・シリーズ〉
2025.10/11(土)14:00 すみだトリフォニーホール
〈サントリーホール・シリーズ〉
2025.10/13(月・祝)14:00 サントリーホール
問:新日本フィルチケットボックス03-5610-3815
https://www.njp.or.jp


