『ゴジラ』から新世界へ――カーチュン・ウォン&日本フィルが魅せるこだわりの名曲プロ

左:カーチュン・ウォン ©Ayane Sato
右:髙木竜馬 ©Yuji Ueno

 伊福部昭の「SF交響ファンタジー第1番」でスタート。映画『ゴジラ』シリーズを手がけた作曲家が、一連の映画音楽を演奏会用の管弦楽曲としてまとめた作品だ。カーチュン・ウォンは、伊福部音楽のエッセンスを鮮やかにホールに響かせてくれよう。

 この音楽で印象的な『ゴジラ』のテーマは、次に演奏される協奏曲の第3楽章にも顔をのぞかせる。ラヴェルのピアノ協奏曲 ト長調だ。ユーモアと抒情を兼ね備えた20世紀を代表するコンチェルト。独奏を務めるのは、数々のコンクールで優勝を果たしてきた髙木竜馬だ。そのテクニカルで華やかな音色を生かし、ラヴェルならではのピアニズムを堪能させてくれることだろう。

 後半は、圧倒的なスケール感と情感豊かなメロディをもつ、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」。広く親しまれた名曲を若い首席指揮者がどのように解釈してくれるのか。そして、それに刺激を受けたオーケストラによる、ルーティンに囚われない新しいサウンドに期待したい。

 カーチュンが日本フィルの首席指揮者に就任して2年。彼らのコンビネーションの成長も楽しみな演奏会になるだろう。

文:鈴木淳史

(ぶらあぼ2025年9月号より)

カーチュン・ウォン(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団
第410回 横浜定期演奏会 
2025.9/20(土)15:00 横浜みなとみらいホール
第256回 芸劇シリーズ 
9/21(日)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 
https://japanphil.or.jp


鈴木淳史 Atsufumi Suzuki

雑文家/音楽批評。1970年山形県寒河江市生まれ。著書に『クラシック悪魔の辞典』『背徳のクラシック・ガイド』『愛と幻想のクラシック』『占いの力』(以上、洋泉社) 『「電車男」は誰なのか』(中央公論新社)『チラシで楽しむクラシック』(双葉社)『クラシックは斜めに聴け!』(青弓社)ほか。共著に『村上春樹の100曲』(立東舎)などがある。
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