ハイレベルの演奏を気軽に楽しめる!
せんくら仙台クラシックフェスティバル2025の聴きどころ

 19回目を迎えた「仙台クラシックフェスティバル(せんくら)2025」が、10月3日〜5日に行われ、3会場で77公演が開催される。「1公演45〜60分」で「好きな時間に親しみやすい名曲を楽しめる」このフェスティバルは、もはや杜の都の秋の名物。以下ポイントごとに今年の注目公演をご紹介したい。

左より:菊池洋子/郷古 廉 ©Hisao Suzuki/リチャード・リン/エヴァン・ウォン

 最初のポイントは「初登場アーティスト」。今年は18名と7組が初登場を果たす。中でも目を引くのが「菊池洋子と郷古廉、N響メンバーによるシューベルト『ます』」(公演番号2)。2002年モーツァルト国際コンクール優勝後の活躍が際立つピアニスト・菊池、N響第1コンサートマスターとソリストの二刀流で人気の郷古、そしてN響の名手達による特別編成のアンサンブルが、オール・シューベルト・プログラムを披露する本公演は、他ではまず味わえない大きな聴きものだ。また、同様の顔ぶれによる「ショパン『ピアノ協奏曲第1番』」室内楽版(同15)も要注目。

 次なるポイントは「仙台国際音楽コンクールゆかりのアーティストの集結」。3年に一度の同コンクールは、入賞者のレベルの高さから、重要視される度合いを着々と増しており、今年6月末に終えた第9回も、いずれ劣らぬ世界の若手奏者達が多彩かつハイクオリティの快演を展開した。今年の「せんくら」では、そうした歴代入賞者等コンクールゆかりのアーティストが再び仙台で想いを込めた演奏を披露する。そこで挙げたいのが、「リチャード・リン&エヴァン・ウォンが織りなす華麗なデュオの世界!」(同31)。第5回ヴァイオリン部門優勝のリンと第6回ピアノ部門第2位のウォンが組んでブラームス等の名作を奏でる本公演は、コンクールが輩出した世界的才能を体感する好機となる。なお、二人は「愛と苦悩のウェルテル四重奏」(同48)、リンは「フェスティバル・ソロイスツ 2025」(同1)に出演し、ウォンはリサイタル(同56)も行うので、とかく目を離せない。このほか、第3回ピアノ部門優勝の津田裕也(同8,41)、第7回ヴァイオリン部門入賞の北田千尋(同33,71)等々、コンクールゆかりの名演奏家に焦点を絞るのも一興だ。

左上より:津田裕也 ©Christine Fiedler/北田千尋 ©Lorenzo Barassi
池辺晋一郎 ©Orchestra Ensemble Kanazawa/原田 節 ©Yutaka Hamano
太田 弦 ©ai ueda

 もう1つ必聴なのが「仙台フィルハーモニー管弦楽団」。この地元の名楽団は迫力ある演奏を複数回聴かせる。特に気になるのは「大河ドラマ&シネマ スペシャルコンサート 仙台で聴く『独眼竜政宗』」(同76)。『スター・ウォーズ』『ハリー・ポッター』等の有名映画音楽に加えて、地元の雄・伊達政宗の生涯を描いたNHK大河ドラマ『独眼竜政宗』のテーマ音楽を、作曲者である池辺晋一郎の解説のもと、原曲でオンド・マルトノを担当した原田節と共に演奏するので、豪華な楽の音を堪能できる。さらに「第九」の第4楽章等に浸れる「グランド・フィナーレ 2025」(同77)ほか数ある仙台フィルの公演は、上昇顕著な俊才・太田弦の指揮を含めて、ぜひとも体験したい。

 このほか、ジャズやブラスの公演、歌声の数々やアニバーサリー作曲家等、話題は書き切れないほど多い。3会場全てが地下鉄南北線沿線にある上に会場内の各ホールも近いので、「はしご」も大いにオススメ。ここは皆で気軽にクラシックを楽しみたい。

文:柴田克彦

(ぶらあぼ2025年8月号より)

せんくら 仙台クラシックフェスティバル2025
2025.10/3(金)~10/5(日) 日立システムズホール仙台(青年文化センター)、太白区文化センター、仙台銀行ホール イズミティ21 他
問:せんくら事務局(仙台市市民文化事業団内)022-727-1872
https://sencla.com
※フェスティバルの詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。