スターピアニスト誕生の瞬間を現地で体感!第19回ショパン国際ピアノコンクール鑑賞ツアー

2021年のコンクールより ©Wojciech Grzędziński & Darek Golik / NIFC 107

文:高坂はる香

 いよいよ10月に開催の迫る、第19回ショパン国際ピアノコンクール。5年に1度ポーランドのワルシャワで行われ、100年近くの歴史の中で数々の世界的スターを輩出し、その背景でさまざまな音楽人生のドラマを生み出してきた。
 さらに前回は、入賞した反田恭平や小林愛実、セミファイナリストとなった角野隼斗など日本人ピアニストたちの活躍も目立ち、大きな話題を呼んだ。

 コンクールは、10月17日のショパンの命日をはさむ3週間にわたって行われる。そのチケットは稀少で、特に本選(ファイナル)のチケットについては、開催から1年前の発売と同時に争奪戦状態になるといってよい。
 それもそのはず、ワルシャワフィルハーモニーホールの座席数は1069席と、国を挙げての世界的イベントでありながら、会場はあまり大きくないのだ。しかしそれは、このコンクールがワルシャワの地で愛され続ける響きと空間、伝統を大切にしているからこそ、必然的に起き続ける問題といえるだろう。

ワルシャワフィルハーモニーホール ©高坂はる香
©Wojciech Grzędziński & Darek Golik / NIFC 107

 ピアノやショパンが好きであれば、そんなショパン国際ピアノコンクールを一度は現地で聴いてみたいという願いがあるだろうが、1年も前から予定を組むことができず、あきらめていた方も多いのではないだろうか。
 そんな方に朗報! 今回、このタイミングで、1次予選から本選まで、さまざまなラウンドの一部や全日程を聴く多様なツアープランの募集がスタートした。

現地だからこそ味わえる大会の熱気

 コンクールの各ラウンドについて簡単にご紹介しよう。
 今回のコンクールは、85名のコンテスタントでスタート。そしてラウンドごとに人数が約半分にしぼられてゆく。
 課題曲はもちろんオール・ショパンだ。1次予選は、エチュードやノクターン、ワルツが基本的に必須で、そこにバラードや舟歌、幻想曲など中規模の作品を合わせる。2次予選は、プレリュードの一部を必須とする新しい課題と、指定のポロネーズを含むリサイタル。3次予選(セミファイナル)は、ピアノ・ソナタとマズルカが必須。大切なジャンルの大小の作品で、ショパンの真髄への理解が試されることになる。
 そして本選は、ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団と共演するピアノ協奏曲。さらに今回のコンクールでは、ここで、最晩年の傑作であり、その音楽的な深みから難しいレパートリーとして知られる幻想ポロネーズを演奏しなくてはならなくなった。

 各ラウンドそれぞれに聴きどころがあるが、地元ワルシャワの聴衆に混ざって、朝から夜までどっぷり若者たちのショパンに浸る経験がしたいなら、1次から3次までのソロ・リサイタルのラウンドがおすすめ。特に1次予選は、結果にかかわらず自分だけのお気に入りを見つけるのにぴったりだし、もしかしたら後に優勝者となるスターに“1次からピンとくる”経験ができるかもしれない。
 また、ステージが進むごとにピアニストたちの注目度や緊張感も高まってゆくので、ある意味、たまたま会場で見かけたコンテスタントに感想や応援の言葉を直接伝えるチャンスは、こうした早いラウンドのほうが多いといえるだろう。

©Wojciech Grzędziński & Darek Golik / NIFC 107
©Wojciech Grzędziński & Darek Golik / NIFC 107

 各ラウンドの最終日が含まれる日程なら、ぜひ、一般の聴衆にも公開される結果発表の場にも足を運んでほしい。この瞬間はもちろんインターネットでも配信されるが、結果発表の予定時刻が近づいて続々とコンテスタントが集まってくる緊張感、アナウンスされていた時刻を過ぎてもなかなか現れない審査委員長を待つ時間、そしてついに発表が行われたあとの悲喜交々の熱気は、現地でしか味わえない。真夜中まで待たされることも多いので、翌日の観光は遅めのスタートを予定しておくのがおすすめ、と付け加えておきたい。

 そして誰もが憧れるのはやはり、本選の華やかなステージだ。
 ピアニストとオーケストラのコミュニケーションの違いを自分の視点で観察しながら、ファイナリストの演奏を聴く。ショパンには2曲しか協奏曲がなく、しかもコンテスタントの多くが第1番を選ぶことから、同じ協奏曲を繰り返し聴くという特殊体験をすることになるだろう。今回からは本選でもソロを聴くことができるので、より充実した鑑賞体験になりそう。そして最終日の夜中には、新しいスターが誕生する運命の結果発表がある。

 本大会に出場するコンテスタントには、過去のショパンコンクールのファイナリストや主要コンクール優勝者など、ピアノファンにとってお馴染みの顔ぶれが多い。
 日本からエントリーしているのは、予備予選を通過した京増修史、中川優芽花、中島結里愛、西本裕矢、小野田有紗、島田隼、進藤実優、東海林茉奈、山縣美季、山﨑亮汰、また指定のコンクールで上位入賞して予選免除となった、小林海都、桑原志織、牛田智大の13名。現地でぜひ応援したい。

ツアーラインナップ

コース出発日日数鑑賞ラウンド
A10月1日(水)7日間1次予選(前半3日間)
B10月1日(水)9日間1次予選(全日程)
C10月4日(土)9日間1次予選(後半2日間)&2次予選(前半2日間)
D10月7日(火)8日間2次予選(全日程)
E10月9日(木)8日間2次予選(後半2日間)&3次予選(1日目)
F10月11日(土)8日間3次予選(全日程)
H10月17日(金)8日間本選(全日程)&入賞者コンサート
I10月13日(月)8日間3次予選(2回)&本選(1回)
J10月14日(火)9日間3次予選(後半2日間)&本選(1回)
※コースによっては満席のものもございます。詳しくは郵船トラベル公式サイトからお問い合わせください。

ショパンの息吹を感じる観光プランも

 各ツアーコース、空き日には、ショパンゆかりの場所やポーランドの魅力的な街を訪ねるプランも用意されている。ジェラゾヴァ・ヴォラにあるショパンの生家は、彼の音楽の原点を感じるために訪れるべき場所だし、ワルシャワ市街地には、ショパンが暮らした家の跡や、彼の心臓が安置されている聖十字架教会、ショパン博物館など、大作曲家の息吹を感じられるスポットがたくさんある。
 また素敵なインテリアのカフェやポーランド料理が楽しめるレストランも多く、ワルシャワは散策する場所に事欠かない街だ。10月は黄金の秋と呼ばれ、色づく木々も美しい。ショパンの目にした秋の風景、吸った空気を感じながら、若いピアニストたちの熱い演奏をたっぷり楽しむことができるだろう。

ショパンの生家
ショパンの心臓が眠る聖十字架教会
自筆譜や手紙、ピアノなど貴重な資料が展示されているショパン博物館
ワルシャワ旧市街広場

郵船トラベル
第19回 ショパン国際ピアノコンクール 2025
<2025年10月出発>
全9コース


問:郵船トラベル 音楽・美術ツアー専用デスク03-6774-7940
https://www.ytk.jp/music/