サロネンとサーリネンが生みだすエモーショナルな空間
コンテンポラリーダンス界をリードするテロ・サーリネンが、自らのダンス・カンパニーを率いて6月に来日する。本誌5月号の「Danza inside」でも紹介されているが、現代音楽やクラシックのファンにも見過ごせない公演だ。
サーリネンが今回さいたま芸術劇場で披露する『MORPHED―モーフト』は、フィンランド出身の同郷人エサ=ペッカ・サロネンの音楽を用いている(「無伴奏ホルンのための演奏会用練習曲」「フォーリン・ボディーズ」「ヴァイオリン協奏曲」)。周知のようにサロネンは、フィルハーモニア管の音楽監督を務めるなど世界を股にかける人気指揮者でサーリネンとも旧知だが、もともとは作曲家で、現在も精力的に創作を続けている。
現代音楽と言っても、サロネンの音楽は華麗なオーケストレーションと躍動感あふれるリズムで、一瞬にして聴き手を魅了する。日常のインスピレーションを楽譜に落とすタブレットPCのCMで、その一端に触れた人も多いだろう。この時のCM曲「ヴァイオリン協奏曲」は、日本初演時にソロの諏訪内晶子が熱演のあまり弦を切ってしまったほどダイナミックな曲だが、これも含め今回サーリネンは3つの楽曲からダンス作品を仕上げた。
「モーフト」は「絶え間なく移りゆくもの」を意味し、天井から何本もの縄がぶら下がったシンプルな舞台上で、8人のダンサーが出会い、争い、愛、憎しみなどの様々な感情をぶつけていく。自身も認めるようにサロネンの音楽は身体性を強く帯びているが、「サーリネンのダンス作品に触れ、自作に潜むエモーショナルな側面に改めて気づかされた」という。ダンスとのコラボによって引き出されたこの“エモーショナルなもの”こそが、公演の見どころになるのではないか。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年6月号から)
6/20(土)15:00、6/21(日)15:00 彩の国さいたま芸術劇場
問:彩の国さいたま芸術劇場0570-064-939
http://www.saf.or.jp