若い世代の考え方も取り入れながら演奏に取り組みたい
東京・晴海に新しいオーケストラが誕生する。その名は「トリトン晴れた海のオーケストラ」。ちょっと意外なネーミングだが、晴海トリトンスクエア内の第一生命ホールを本拠地とする室内オーケストラだ。第一生命ホールのオープン、そして同ホールをベースに活動するトリトンアーツネットワーク(TAN)の創立から、来年の秋で15年を迎える。その記念すべき15周年に先駆け、このオーケストラの結成記念演奏会が6月に開催される。コンサートマスターを依頼されたヴァイオリニストの矢部達哉は抱負をこう語る。
「音響のとても良いホールで、じっくりリハーサルをし、演奏会を定期的に行う。これは、なかなか実現が難しいことなので、コンサートマスターを依頼されて光栄です。そこで、これまで一緒に演奏してきた信頼のおける演奏家たちに声をかけると同時に、TANが取り組んできた若手育成事業などに参加していた若い演奏家たちにも呼びかけました。野球でいえば、僕は清原・桑田世代。いつの間にかオーケストラの中でもベテランになっています。この新しいオーケストラでは、若い世代の考え方も知りたいと思っています。こちらも胸襟を開き、その若い世代の考え方も取り入れながら、演奏に取り組みたいですね」
演奏会は今のところ年に1回の定期演奏会を予定しており、地元へのアウトリーチ活動などにも取り組んでいくという。また、指揮者は基本的には置かずに活動していくとのこと。その第1回の演奏会はオール・モーツァルト・プログラム。第一生命ホールを管理運営する第一生命保険株式会社がザルツブルクのモーツァルトの住居復元事業に参加するなど、モーツァルトと関わりが深いことから決まったプログラムだ。
「モーツァルトの音楽は、単に楽譜を音にするだけでは、その魅力が引き出せないものです。リハーサルを通して、どう表現するかという試行錯誤の中で、モーツァルトの世界に迫っていきたい。室内オーケストラのレパートリーには近現代ものにもたくさんの傑作がありますが、とりあえずはモーツァルトを中心にしたプログラムで演奏会を行っていきます」
プログラムは「交響曲第40番」「ディヴェルティメント K.136」などモーツァルトの作品の中でも傑作ばかり。多くの人が知る傑作だからこそ、様々な楽しみ方が出来るはず。2020年の東京オリンピックに向けて変貌をとげつつある晴海地区。そこに新しい音楽の風が吹き始める。
取材・文:片桐卓也
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年6月号から)
晴海トリトンスクエア15周年記念 トリトン晴れた海のオーケストラ 第1回演奏会
6/20(土)14:00 第一生命ホール
問:トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702
http://www.triton-arts.net