Journey Through Music ! 音楽の旅へ!

今年も調布の街に音楽祭がやってくる。2025年のテーマは「Journey Through Music! 音楽の旅へ!」。多様な音楽が並ぶ6月下旬の9日間、音楽の旅へ導かれる。調布にゆかりのあるエグゼクティブ・プロデューサーの鈴木優人とアソシエイト・プロデューサーの森下唯を中心に、監修の鈴木雅明、バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)をはじめ、国内外のトップアーティストたちが参集し、調布の特色を活かした企画が連続する。今年は、初めての試みとして、複数公演をお得にハシゴできるセット券の販売も実施され、さらに気軽に出かけやすくなりそうだ。

©Marco Borggreve
♪ ブラスの賑やかなステージで開幕!
オープニング・コンサートは6月22日。「ビッグバンドガラ」と銘打ち、サクソンフォンの上野耕平とアンドレアス・ベーレン、トランペットの松井秀太郎、ぱんだウインドオーケストラら豪華出演者が、吹奏楽からジャムセッションまで多彩に繰り広げる。挟間美帆がぱんだウインドのために編曲した「パリのアメリカ人」や「A列車で行こう」ほか、グルーヴのきいた輝かしいサウンドで開幕を宣言。

♪ 悠久の時の流れに想いをはせて
6月25日には調布国際音楽祭の大きな名物となった深大寺公演、「深大寺でひたる悠久の調べ」が開催される。深大寺本堂に入ることのできる貴重な機会で、公演冒頭には声明の詠唱もあり、1年でこの日だけの特別な場となる。午前と午後の2回開催されるが、毎回完売必至の人気公演だ。今年は世界的リュート奏者、今村泰典のテオルボとビウエラで、J.S.バッハの無伴奏チェロ組曲第2番や、スペインのルネサンス音楽などが予定されている。バッハから約1000年前に創建された深大寺で、弦の響きと自然の音に包まれる時間。

♪ フェスオケ講師陣による上質の室内楽
6月26日は2公演。昼は白井圭と岡本誠司(以上ヴァイオリン)らによる弦楽四重奏。シューベルト「ロザムンデ」とドヴォルザーク「アメリカ」のメロディックな2名作で、名手たちの歌心を堪能する午後となる。

♪ 初来日! ベルギーの声楽アンサンブルによるバッハ・ファミリーのモテット
夜はリオネル・ムニエ率いるヴォクス・ルミニスが登場。ベルギーを代表する世界的な声楽グループで、ヨーロッパではよく知られているが、日本では音源でしか知る機会がなく、待望の初来日が実現する。しかも世界各地で評判となったプログラム「華麗なるバッハ一族の音楽」を用意。大バッハを中心にその叔父や従兄弟の作品を含む、稀少かつメッセージ性あふれる内容で、その実力を余すところなく聴かせる注目公演だ。

♪ 腕利きの奏者が勢揃い
27日も2公演で、昼はプーランクのピアノ六重奏曲ほか。フルート上野聖矢、オーボエ荒木奏美、ピアノ森下唯ら、木管とピアノのトップ奏者たちが集い、木管アンサンブルの傑作を聴かせる。夜は若手を代表するヴァイオリニストのひとり、成田達輝のヴァイオリン・リサイタル。世界で活躍する彼の演奏を、せんがわ劇場のインティメートな空間で体感できるのはめったにない好機だ。

下段左より)長哲也 ©︎Ayane Shindo/濱地宗/成田達輝 ©Marco Borggreve
♪ 鉄オタ集まれ!
昨年の調布音楽祭は「将棋と音楽」という意外な組み合わせに挑戦したが、今年のチャレンジは「鉄道と音楽」!28日午後の「鉄道×音楽」は鈴木優人、森下唯に、音楽界屈指の“鉄道オタク”の上野耕平、ゲストには『タモリ倶楽部』等で“鉄オタ”ぶりを発揮してきたモデル市川紗椰も登場。「初心者」枠としてヴァイオリンの廣津留すみれも参加。元祖“鉄オタ”のドヴォルザークをはじめ、鉄道と音楽はこれまでも様々に関係してきた。昨年の将棋公演の成功を思い返すと、今回もテンション高く、かつ初心者も楽しい、唯一無二のステージになるに違いない。

♪ ヘンデルのオペラを最高の布陣で
28日の夜は、今年最大の注目を集めるであろう、鈴木優人指揮のバッハ・コレギウム・ジャパンによるヘンデルのオペラ《ロデリンダ》! 演奏会形式で、上演稀少な演目の音楽をじっくりと味わえる。BCJのオペラというだけでも貴重だが、ベルギーのヴォクス・ルミニスも共演し、タイトルロールにカリーヌ・ティニー、日本からはカウンターテナー藤木大地ら人気歌手も加わり、日欧の古楽界の粋を集めた豪華布陣で、ヘンデルの世界を深く体験できる。古楽ファン、オペラファン、いずれも逃がせない公演となる。


♪ 日独のピアニストがゲーム音楽で驚異のプレイを披露
最終日の29日は、昼に「ベンヤミン・ヌス×森下唯」のピアノ・デュオ公演。ヌスはドイツのピアニストで、「ファイナルファンタジー」などゲーム音楽のCDをドイツ・グラモフォンからリリースするなど、異色の活動を展開する。ネットでは「ピアニート公爵」としても知られる森下唯は、やはりゲーム音楽はじめジャンルを問わず活躍。その彼らがリアルで邂逅し、日本のゲーム音楽を中心にセッションを実現する。いまのゲーム音楽は数十年後の「クラシック音楽」かもしれない。その気概が「日本の新たなるクラシック」との公演タイトルに込められる。

♪ 若いエネルギーがほとばしる「ペトルーシュカ」
音楽祭最後の29日夕方の公演は、これも音楽祭名物企画である「フェスティバル・オーケストラ」。鈴木雅明の指揮による公演で、オーディションで選抜された奏者たちによるフェスオケは年々応募が増えて、「優れた奏者の応募が増えて、惜しくも全員採用できなくなっている」というほど充実を増している。鈴木雅明の集中的な指導で、毎年熱い演奏を実現しているが、今年はストラヴィンスキーの難曲「ペトルーシュカ」(1947年版)に挑戦する。大編成オーケストラの色彩豊かな作品で、音楽祭に出演してきた名手も要所に入るフェスオケで体験できる。バッハの管弦楽組曲第4番に、岡本誠司がソロを務めるモーツァルトのヴァイオリン協奏曲第3番もあり、名手のヴァイオリンも楽しめる、聴きごたえ十分なプログラムで音楽祭を締めくくる。

他にも、恒例となったワークショップ「新しい音楽をつくる」では金子仁美、細川俊夫、藤倉大というタイプの違う作曲家たちがそろう、世界的にも稀少な場となる。キッズコンサートや、布多天神社など市内の名所でのコンサートもあり、調布の街なかにも音楽があふれる。
文:林昌英


【Information】
調布国際音楽祭2025
2025.6/21(土)~ 6/29(日) 調布市グリーンホール、調布市文化会館たづくり、調布市せんがわ劇場、深大寺本堂 ほか
おもな公演
◎オープニング・コンサート ~ビッグバンドガラ! Take the “A” train~
6/22(日)14:00 調布市グリーンホール(大)
◎深大寺でひたる悠久の調べ
6/25(水)①11:15 ②14:15 深大寺本堂
◎名手たちが奏でるドヴォルザーク《アメリカ》
6/26(木)13:00 調布市文化会館たづくり くすのきホール
◎ヴォクス・ルミニス「Bach Dynasty〜華麗なるバッハ一族の音楽」
6/26(木)19:00 調布市文化会館たづくり くすのきホール
◎名手たちが奏でるプーランク《ピアノ六重奏曲》
6/27(金)13:00 調布市文化会館たづくり くすのきホール
◎成田達輝ヴァイオリンリサイタル
6/27(金)19:00 調布市せんがわ劇場
◎鉄道×音楽 Take the “Keio” train!
6/28(土)13:00 調布市グリーンホール(大)
◎BCJ ヘンデル:オペラ《ロデリンダ》(演奏会形式)
6/28(土)17:00 調布市文化会館たづくり くすのきホール
◎ベンヤミン・ヌス×森下唯 Duo Piano
6/29(日)13:00 調布市文化会館たづくり くすのきホール
◎鈴木雅明×フェスオケ 渾身のペトルーシュカ
6/29(日)16:00 調布市グリーンホール(大)
[チケット発売]
★セット券
会員・一般:3/12(水) 〜
★単券発売日
ちょうふアートプラス会員:4/3(木)〜
一般:4/10(木)〜
★寄附付きチケット&CIMFスポンサーシートもあり(申込期間:2/19(水)〜)
問:チケットCHOFU 042-481-7222 (初日はインターネットのみ)
https://www.chofumusicfestival.com
※全公演の詳細は「調布国際音楽祭」公式ウェブサイトからご確認ください。
