メゾソプラノの藤村実穂子が第44回(2012年度)「サントリー音楽賞」を受賞した。
「サントリー音楽賞」(旧名・鳥井音楽賞)は、公益財団法人 サントリー芸術財団が1969年の設立以来、わが国における洋楽の振興を目的として、毎年、その前年度においてわが国の洋楽文化の発展にもっとも顕著な功績のあった個人又は団体を顕彰するもの。3月12日(火)に開かれた最終選考会で選定され、3月18日(月)理事会において正式に決定された。賞金は700万円。
藤村実穂子は、2002年のドイツ・バイロイト音楽祭デビュー以来、欧米のクラシック音楽界において欠かせない存在となっている、日本が世界に誇る歌手。そのつねに安定した歌唱、とりわけドイツ語の的確な発音は、ヨーロッパの批評家をも脱帽する域に達している、と高く評価されている。
2012年には、パリ・シャンゼリゼ劇場におけるワーグナー《パルジファル》のクンドリ役(3月)、ロンドン・コヴェントガーデン歌劇場における同《神々の黄昏》のヴァルトラウテ役(10月)などで活躍、日本での演奏活動では、とりわけドイツリートにおける成果が目覚ましく、シューベルト、マーラー、ヴォルフ、R・シュトラウスの歌曲を取り上げたリサイタル(11月、フィリアホール、紀尾井ホール)もさることながら、マーラー《大地の歌》(11月、いずみホール、室内合奏版)が、その白眉と評価された。またマリス・ヤンソンス指揮バイエルン放送交響楽団来日公演のベートーヴェン《交響曲第9番》では、高度なアンサンブル能力をも示した。
【プロフィール】
藤村実穂子(ふじむら・みほこ) 声楽
東京芸術大学音楽学部声楽科卒業、同大学院修了、ミュンヘン音楽大学大学院留学中にワーグナー・コンクール(バイロイト)で事実上の優勝、マリア・カナルス・コンクール優勝など数々の国際コンクールに入賞。2002年日本人として初めて主役級でバイロイト音楽祭デビューし、「スターが誕生した」などの賞賛を浴びた。以来、9年連続全て主役級で出演。これまでにミラノ・スカラ座、ウィーン国立歌劇場、ロイヤル・オペラ・ハウス・ロンドン、バイエルン州立歌劇場、フィレンツェ五月音楽祭、ベルリン・ドイツ・オペラ、ルツェルン音楽祭、ナポリ・サン・カルロ劇場、ヴェローナ、新国立劇場などに登場。またクリスティアン・ティーレマン、クラウディオ・アバド、ベルナルト・ハイティンク、ズービン・メータ、クリストフ・エッシェンバッハ、コリン・デイヴィス、クルト・マズア、マリス・ヤンソンス、シャルル・デュトワ、リッカルド・シャイー、またウィーン・フィル、ベルリン・フィル、ロイヤル・コンセルトヘボウ管、バイエルン放送響、ロンドン・フィル、ローマ聖チェチーリア音楽院管、ロンドン響、パリ管、ミュンヘン・フィル、フィラデルフィア管、ワシントン・ナショナル響、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管などから指名を受けて幅広いレパートリーで共演を続け、欧米で「現代最高のメゾ」の名を得ている。