コパチンスカヤと彼女がアーティスティック・パートナーを務めるカメラータ・ベルンの最新盤は「逃亡者」。表題作は後期ロマン派期のシェーンベルクを思わせるイザイの弦楽合奏曲だが、故郷とそこからの離脱というタイトルの含意は同時にアルバム全体のコンセプトにもなっている。ウクライナやモルドバ(コパチンスカヤの母国)の民謡と、シュニトケ、パヌフニク、シューベルト、ヴィシネグラツキーといった故郷にねじれた感情を抱いた作曲家の作品が組み合わされる。冒頭の狂気じみた乱舞に始まり、コパチンスカヤの野性のアンテナが彼らの音楽に潜む孤独にビンビンと反応している。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2024年12月号より)
【information】
CD『エグザイル/パトリツィア・コパチンスカヤ&カメラータ・ベルン』
クギクリ(伝承曲)(J.ケレン編)/シュニトケ(M.メルケル編):チェロ・ソナタ第1番/パヌフニク:ヴァイオリンと弦楽のための協奏曲/シューベルト(P.コパチンスカヤ編):5つのメヌエットと6つのトリオ第3番/ヴィシネグラツキー:弦楽四重奏曲第2番/イザイ:逃亡者 他
パトリツィア・コパチンスカヤ(ヴァイオリン/指揮/歌)
カメラータ・ベルン 他
Alpha/ナクソス・ジャパン
NYCX-10503 ¥3300(税込)