中井恒仁&武田美和子(ピアノデュオ)、独奏&連弾で堪能するロマン派音楽の粋

左:中井恒仁 右:武田美和子 ©Toshiaki Yamada

 「ピアノの芸術」——中井恒仁と武田美和子の演奏を一度でも耳にすれば、この簡潔なタイトルが、いかに“直球力”を持ったものであるかが実感できるだろう。今回で8回目を数えるこのリサイタルシリーズは、毎回ピアノの魅力と奏者の至芸を、壮大なスケール感と緻密な解釈とで聴かせる。今年は1台のピアノによる、充実のソロおよび連弾という内容が楽しみだ。

 冒頭はショパンが唯一残した若き日の連弾作品「4手のための変奏曲」で幕を開ける。そこから武田がショパンの世界をソナタ第3番で展開させ、同じロ短調で書かれたリストの大作ソナタを中井が披露する。ロマン派の傑作ソナタ2作を通じて、両者それぞれの音楽性を堪能したあとは、締めくくりに今年生誕200年のスメタナの「モルダウ」(作曲者による連弾版)が演奏される。中井と武田の音楽が、再び豊かな大河へと合流するという構成だ。深まる秋の夜に、聴き応えたっぷりのプログラムを堪能したい。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2024年11月号より)

中井恒仁 & 武田美和子 ピアノ・ソロ&デュオリサイタル ピアノの芸術Vol.8
2024.11/20(水)19:00 東京文化会館(小)
問:プロアルテムジケ03-3943-6677
https://www.proarte.jp