ロンドン交響楽団のコンサートマスターを長年務めているロマン・シモヴィッチによる、日本初となるリサイタルだ。このサイモン・ラトルの信頼も厚いヴァイオリニストは、モンテネグロに生まれ、モスクワ音楽院で学び、さまざまな国際コンクールで名を上げた。パガニーニ「24の奇想曲」全曲録音では、その高度なテクニックに加え、精緻にして大胆な音楽性がほとばしっている。
そんな逸材と共演するピアニストは、アンドレイ・ググニン。ロシアがウクライナに侵攻した当日、モスクワから海外公演に旅立ち、その日から一度も帰国していない彼は、日本でもたびたび演奏を行っており、その濃密なピアニズムに触れた人も少なくないはず。ハイペリオン・レーベルを代表するピアニストとして、ゴドフスキーなどの難曲にも挑んでいる。
実力派の2人による王子ホールでのプログラムは、ストラヴィンスキーの「イタリア組曲」で始まる。バレエ「プルチネルラ」からの編曲による新古典主義の作品を彼らは明確な縁取りで描いてくれよう。続くベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」では、その激しいやり取りに、彼らの鋭い個性もくっきりと浮かび上がるに違いない。
後半のプログラムに、リヒャルト・シュトラウスのヴァイオリン・ソナタをもってくるというのも挑戦的だ。伝統的な形式のなかに、華やかなロマン派情緒をたたえた作品。テクニックはもちろんのこと、ロマンティシズムと構成力をも兼ね備えた2人による鮮やかなパフォーマンスが期待できそうだ。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2024年11月号より)
ロマン・シモヴィッチ(ヴァイオリン) & アンドレイ・ググニン(ピアノ)
2024.12/13(金)19:00 王子ホール
問:王子ホールチケットセンター03-3567-9990
https://www.ojihall.jp