今年30歳の太田弦が九響首席指揮者に就任。その記念公演となった4月のショスタコーヴィチのライブ録音が早くもリリース。その期待の大きさも納得の快演だ。交響曲でテンポを揺らさず歩みを続ける胆力、ワイルドな奏法が慣例の場面も丁寧に奏でる判断などに、誠実にスコアと向き合う太田の方向性が示される。虚心に美音で構築することで、ソロは冴え冴えと響き、弱音は精妙に鳴り、そしてクライマックスは楽員の気迫が収斂して突き抜けた音響となる。祝典序曲の推進力と開放感も華やか。交響曲結尾の大見得など、太田の表現はまだ底が知れない。新コンビに期待が募る。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2024年9月号より)
【information】
SACD『ショスタコーヴィチ:交響曲第5番、祝典序曲 /太田弦&九響』
ショスタコーヴィチ:祝典序曲、交響曲第5番
太田弦(指揮)
九州交響楽団
収録:2024年4月、アクロス福岡シンフォニーホール(ライブ)
オクタヴィア・レコード
OVCL-00853 ¥3850(税込)