岡崎夫妻のシューマン・ライブ。岡崎耕治のファゴットは、のびやかで柔らかい。「幻想小曲集」は原曲のクラリネットより明るい色で、優しい歌に穏やかな拡がりがある。まろやかでしみじみとした味わいがいい。岡崎悦子の「交響的練習曲」は、とてもきれいなタッチで変奏を紡いでゆく。どの練習曲も聴き応えがあるが、特に印象的なのは、遺作の変奏曲。第2変奏は歌がきれいで神秘的、第4変奏はひそやかでありながら、変化に富み、奥行きを感じさせる。ブラームスが校訂で加えたのもよく解る。ラフマニノフのソナタ(原曲はチェロ)第3楽章は、ファゴットのメロディにピアノが繊細に絡んで美しい。
文:横原千史
(ぶらあぼ2024年1月号より)
【information】
CD『シューマン:幻想小曲集、交響的練習曲/岡崎耕治&岡崎悦子』
シューマン:幻想小曲集、交響的練習曲(ピアノ独奏)、素晴らしく美しい五月に、春の宵/ラフマニノフ:ソナタ ト短調 第3楽章「アンダンテ」
岡崎耕治(ファゴット)
岡崎悦子(ピアノ)
収録:2023年5月、王子ホール(ライブ)
マイスター・ミュージック
MM-4524 ¥3520(税込)