北とぴあ国際音楽祭2023 J-TRAD Ensemble MAHOROBA Concert ~North to Nowhere~

注目の和楽器アンサンブルが挑む現代音楽の最先端

(c)TAMAKI YOSHIDA

 バロック・オペラをはじめ、古楽から現代音楽、伝統音楽まで数々の注目公演を開催してきた「北とぴあ国際音楽祭」。今年も多彩な公演が予定されているが、日本の伝統音楽演奏家集団「J-TRAD Ensemble MAHOROBA」による藤倉大作曲「North to Nowhere」の世界初演は、好奇心に満ちた聴き手にとって関心の的となりそうだ。

 「North to Nowhere」は、藤倉のオペラ《アルマゲドンの夢》でもコラボレーションしたハリー・ロスが脚本、三味線演奏家の本條秀太郎が演出を手がけ、ふたりの俳優の語りと和楽器のアンサンブルによって繰り広げられる作品。《アルマゲドンの夢》と同じく近未来を予言するようなストーリーだという。藤倉はこれまで、箏、三味線、尺八といった和楽器のために数々の作品を書いてきた。作曲にあたっては、演奏家とロンドンの自宅をオンラインでつなぎ、その楽器の構造や奏法について対話と試行錯誤を重ねながら「新しい音」を探していく。そこから生まれる音楽は、伝統楽器をひとつの「楽器」としてフラットな目線で捉え直し、まっさらなキャンバスに自由に描いたような新鮮な驚きに満ちている。かといって伝統的な様式を無視しているわけではない。藤倉は3年にわたり本條秀慈郎にオンライン稽古で三味線を習っており、本作もみずから弾きながら作ったという。

 そのほか、本條秀慈郎が坂本龍一に委嘱した「honj」、高田新司(本條秀太郎の本名)作曲の「正方形の月」、藤倉大の「Cutting Sky」(箏と三味線のためのバージョン)がプログラムされている。「North to Nowhere」と合わせて、全体がひとつのシアターピースとしてどのように響くのか、今から期待に胸膨らむ。

文:原典子

【Information】
北とぴあ国際音楽祭2023
J-TRAD Ensemble MAHOROBA Concert ~North to Nowhere~

2023.11/28(火)19:00 北とぴあ さくらホール

●出演
J-TRAD Ensemble MAHOROBA
 本條秀慈郎、本條秀英二(以上 三味線)
 川村葵山(尺八)
 吉澤延隆(箏、十七絃箏)
 木村麻耶(箏、二十五絃箏)
 堅田喜三郎(お囃子)
 壤晴彦、相澤まどか(以上 語り)

●曲目
藤倉大:North to Nowhere(世界初演)
脚本 ハリー・ロス 演出 本條秀太郎
坂本龍一:honj
高田新司:正方形の月、空とぶ魚
藤倉大:Cutting Sky
ほか

●料金
一般:S席4,000円 A席3,000円
メンバーズ割引:S席3,500円 A席2,500円
北区民割引:S席3,500円 A席2,500円
25歳以下:S席2,000円 A席1,500円

問:北区文化振興財団03-5390-1221
https://kitabunka.or.jp/himf/