デビュー10年目で意欲に燃える福田進一と、当時還暦を迎え円熟味を増していた小林道夫。クラシックギター+チェンバロ/フォルテピアノという異色デュオの名盤が30年の時を経て蘇った。彼らの指先からつま弾きだされる音は混じりあってはじける泡のように軽快に鳴り、すっきりとしたサウンドを作っていく。ポンセの表題作では端正な作りの中にふっと妖しく、艶っぽい表情を浮かべる。続く3曲はバロック―古典派の作品だが、どれも華やかで明るく感覚を心地よく刺激してくる。ベートーヴェンによる《魔笛》変奏曲(恋人か女房があればいいが)は、二人の掛け合いがとりわけチャーミングで楽しい。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2023年11月号より)
【information】
CD『ポンセ:ギターとチェンバロのためのソナタ 〜ギターと鍵盤楽器のための作品集〜/福田進一&小林道夫』
ポンセ:ギターとチェンバロのためのソナタ/シュトラウベ:ソナタ第1番/ベートーヴェン(カルッリ編):モーツァルト《魔笛》より〈恋人か女房があればいいが〉の主題による10の変奏曲/ジュリアーニ:パイジェルロ《水車小屋の娘》より〈うつろな心〉の主題による大変奏曲とポロネーズ
福田進一(ギター/19Cギター)
小林道夫(チェンバロ/フォルテピアノ)
マイスター・ミュージック
MM-4522 ¥3300(税込)