近年、吉松隆人気が再燃しつつあるが、ブーム牽引の一翼を担っているのが原田慶太楼。3月の東響との吉松個展の録音が早くもリリースされた。歯切れよいリズム感、ノリのよさ、安定感のあるシャープな音像は全曲に通底するが、作品ごとのアプローチの多彩さが面白い。交響曲第3番は6曲ある吉松のシンフォニーの中でもとりわけ骨太の構成を持つが、クラシカルな様式感とポップな感性がバランスしている。「鳥は静かに…」は抒情的、ジュニア・オケのために書かれた「鳥のシンフォニア」は明るく楽しい。「タルカス」吉松編曲版は原曲のもつロック性を全面に出し、オケが大胆に吠える。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2023年8月号より)
【information】
CD『吉松隆:交響曲第3番、タルカス/原田慶太楼&東響』
吉松隆:交響曲第3番、鳥は静かに…、鳥のシンフォニア「若き鳥たちに」/K.エマーソン&G.レイク(吉松編):タルカス
原田慶太楼(指揮)
東京交響楽団
収録:2023年3月、東京芸術劇場(ライブ)
日本コロムビア
COCQ-85609-10(2枚組) ¥4400(税込)