中国人の両親の下、オーストラリアに生まれたリザ・リムが、トランスカルチャーな出自を反映するかのように、東西の3人の女性—古代ギリシャの詩人サッポー、聖母マリア、イスラム教の開祖ムハンマドの娘ファーティマをテーマに、全三楽章の大管弦楽曲を書いた。オーケストラは荒々しく吠えもするが、三和音やペダル音、倍音群が、まるで地上から天に向かって立ち上る神々しく揺るぎない光のように楽曲を支配、終楽章では女声が聖なるイメージを歌いだす。それは戦いを乗り越える愛のメッセージだ。話題の指揮者マチェラルも、躍動感あふれる演奏で作品の魅力をダイナミックに伝える。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2023年7月号より)
【information】
CD『リザ・リム:受胎告知の三連祭壇画/クリスティアン・マチェラル&WDR響&エミリー・ヒンドリックス』
リザ・リム:受胎告知の三連祭壇画
クリスティアン・マチェラル(指揮)
WDR交響楽団
エミリー・ヒンドリックス(ソプラノ)
KAIROS/東京エムプラス
P0022003 KAI ¥3143(税込)