【CD】幻想を求めて―スクリャービン&ラフマニノフ/福間洸太朗

 スクリャービンとラフマニノフ若き日の作品から“幻想”をテーマに選曲。前半のスクリャービンは暗い情熱が迸る練習曲「悲愴」やソナタ2番も魅力だが、興味深いのは14歳の作である「幻想ソナタ」。福間洸太朗による繊細かつ巧みなドラマの表現が、若き天才にすでに宿っていた個性を伝える。柔らかさと力強さを備えた幻想曲の音も印象的。後半のラフマニノフ「幻想的小品集」では、「メロディ」や「セレナード」といったロマンあふれる美しい楽曲が耳を捉える。蓄積したエモーションをソナタ2番で昇華させるそこからの展開は、いつの時も芸術家が抱く葛藤と表現への熱望を思わせる。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ2023年6月号より)

【information】
CD『幻想を求めて―スクリャービン&ラフマニノフ/福間洸太朗』

スクリャービン: 「3つの小品」より〈第1番 練習曲〉、「12の練習曲」より〈第12番 悲愴〉、幻想ソナタ 嬰ト短調、ピアノ・ソナタ第2番「幻想」、「左手のための2つの小品」より〈第2番 ノクターン〉、幻想曲 ロ短調/ラフマニノフ:幻想的小品集、ピアノ・ソナタ第2番(1931年改訂版)

福間洸太朗(ピアノ)

ナクソス・ジャパン
NYCC-27314 ¥2750(税込)