スイス・バーゼルで研鑽を積み欧州での活動を経て、国内を拠点に室内楽の分野でも活躍中のクラリネット奏者・田中香織のソロ・デビュー盤。管楽器奏者にとって主軸となる近代〜現代フランス音楽の華麗なる「ファンタジー」が盛り沢山。19世紀後半生まれの作曲家たちの、不思議とフランス映画のワンシーンを思わせるような作品群の中で、冒頭のピアノからドイツ・ロマン派の流れを感じさせるデンマークの雄・ニールセンの若書きがアクセントになっている。どこかエレクトリックな響きすら感じるヴィトマンの無伴奏曲や名奏者でもあったセムラー=コルリーの弾むような2曲も素敵。
文:東端哲也
(ぶらあぼ2023年5月号より)
【information】
CD『ファンタジー/田中香織』
デルマ:イタリア風幻想曲/ゴーベール:ファンタジー/マズリエ:ファンタジー・バレエ/ニールセン:ファンタジー/マルティ:ファンタジー第1番/ヴィトマン:ファンタジー/ルヴェル:ファンタジー/セムラー=コルリー:ファンタジーとジーグ形式のダンス
田中香織(クラリネット)
仲地朋子(ピアノ)
妙音舎
MYCL-00035 ¥3300(税込)