エベーヌ弦楽四重奏団とヴィオラのタメスティが、モーツァルトの名作五重奏曲に取り組んだ。2004年ミュンヘン国際音楽コンクール各部門の優勝者同士という縁があり、いまやそれぞれがトップに君臨する両者だけに、隙のないアンサンブルと音色の統一は当然のように最高水準、ニュアンスは緻密を極める。紛れもない名演。むしろ表現としてはストイックにすら感じられ、20年6月、ロックダウンの合間のパリでの録音ということも関係するだろうか。4番の緩徐部分の詩情と哀感は深く、最後ト長調に転じてもその影が感じられる。なお、3番の中間楽章はメヌエット—アンダンテの順。
文:林昌英
(ぶらあぼ2023年5月号より)
【information】
CD『モーツァルト:弦楽五重奏曲第3番・第4番/エベーヌ弦楽四重奏団&アントワン・タメスティ』
モーツァルト:弦楽五重奏曲第3番、同第4番
エベーヌ弦楽四重奏団
【ピエール・コロンベ ガブリエル・ル・マガデュール(以上ヴァイオリン) マリー・シレム(ヴィオラ) ラファエル・メルラン(チェロ)】
アントワン・タメスティ(ヴィオラ)
ERATO/ワーナーミュージック・ジャパン
5419.721332 ¥オープン価格