イム・ユンチャン、ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール優勝後の初録音。ホン・ソグォン指揮、光州交響楽団との一公演のプログラムがまるまる収録されている。「皇帝」冒頭は、肩の力が抜け、同時に華やかなピアノで始まり、細部まで大切にしたタッチと潔さが良いバランスで両立されつつ起伏に富んだ音楽が展開する。アンコール3曲の選択にも若者の感性があらわれているが、特にスクリャービンの幻惑的な音は耳を惹きつけ、その後の熱狂的歓声とのギャップも含めておもしろい。尹伊桑とバーバーも併せて演奏された“反逆と平和の音楽”をテーマとしたプログラムだったようだ。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ2023年4月号より)
【information】
CD『ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番《皇帝》他/イム・ユンチャン』
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」/尹伊桑:交響詩「光州よ、永遠に」/バーバー:弦楽のためのアダージョ op.11/スクリャービン:「2つの詩曲 op.69」より〈第1番〉、「3つの小品 op.45」より〈第1番 アルバムの綴り〉 他
イム・ユンチャン(ピアノ)
ホン・ソグォン(指揮)
光州交響楽団
収録:2022年10月、韓国(ライブ)
ユニバーサル ミュージック
UCCG-1899 ¥3080(税込)