フランス音楽のスペシャリストであり、優れた教育者でもある秦はるひ。彼女を中心に12名のピアニスト達がカール・チェルニーの「12の前奏曲とフーガ」を世界初録音。“練習曲”のイメージが先行する作曲家だが、彼が遺した作品は1000曲以上と膨大であり、メカニックだけではない様々な魅力に富んでいる。今回の曲はまさにそうしたものの一つだ。リストもかくやと思われるほどの超絶技巧が駆使されつつ、各声部の充実した対話が繰り広げられる作品群である。演奏者の技量はもちろん、使用されたファツィオリF308という多彩な音色をもつピアノも、作品の魅力を存分に届けるのに貢献している。
文:長井進之介
(ぶらあぼ2023年1月号より)
【information】
CD『チェルニー:12の前奏曲とフーガ/アトリエ・アッシュ』
チェルニー:12の前奏曲とフーガ op.400
秦はるひ 伊藤順一 黒岩航紀 小菅綾 小林えりか 齊藤一也 増田達斗 高橋ドレミ 中平優香 中田雄一朗 鈴木隆太郎 小山田桃(以上ピアノ)
アールアンフィニ
MECO-1076 ¥3300(税込)