【CD】ベートーヴェン チェロとピアノのための 作品全集/花崎薫&野田清隆

 花崎薫は大阪フィルの客演首席。ベートーヴェンのチェロ・ソナタは、小倉貴久子のフォルテピアノと全集録音している。この野田清隆のモダンピアノとの全集は、長年の取り組みの集大成のような出来である。まず初期の第1、2番からは、青年の楽想を詰め込むだけ詰め込んだ覇気が伝わってくる。ピアノも自らの力を誇示するために特に力が入っていて、野田もそれに十二分に応えている。第3番は傑作に相応しい大柄で重厚な演奏。それでいてセンスがよく上品だ。第4、5番は難渋だが、本盤は対位法的なデリカシー(特にフーガの構築)やカンタービレの美しさなど特筆に値する。素晴らしいベートーヴェンだ。
文:横原千史
(ぶらあぼ2022年10月号より)

【information】
CD『ベートーヴェン チェロとピアノのための 作品全集/花崎薫&野田清隆』

ベートーヴェン:チェロ・ソナタ第1番〜第5番、ヘンデル「マカベウスのユダ」の〈見よ、勇者は帰る〉の主題による12の変奏曲、モーツァルト《魔笛》の〈恋人か女房が〉の主題による12の変奏曲、同〈恋を知る男たちは〉の主題による7つの変奏曲

花崎薫(チェロ)
野田清隆(ピアノ)

コジマ録音
ALCD-9238,9239(2枚組) ¥3740(税込)