ピアニストの「弾きたい」「聴かせたい」という熱い思いがダイレクトに伝わってくる、潔いディスクだ。メシアン「幼な子イエスにそそぐ20の眼差し」では、神の化身が地上に出現した喜びが全身を貫くように駆け巡り(第10曲)、聖女に接吻したというイエスの慈愛が穏やかなタッチで描かれる(第15曲)。「鳥のカタログ」からはもっとも長大な〈ヨーロッパヨシキリ〉をチョイス。楽譜が鳥の声を正確になぞっているという確信をもって約27分間狂い鳴く。オアナの「24の前奏曲」も目の覚めるような激しくキレのあるタッチで攻めまくった。地響きがしそうな舞踏の後、ラヴェルの懐古調でクール・ダウン。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2022年9月号より)
【information】
CD『メシアンへのオマージュ 平林弓奈 メシアンを弾く』
メシアン:「幼な子イエスにそそぐ20の眼差し」より〈第10曲 喜びの精霊のまなざし〉〈第15曲 幼子イエスの接吻〉、「鳥のカタログ」より〈第7曲 ヨーロッパヨシキリ〉/モーリス・オアナ:「24の前奏曲」より〈No.16〜No.24〉/ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
平林弓奈(ピアノ)
ナミ・レコード
WWCC-7966 ¥2750(税込)