パシフィックフィルハーモニア東京
飯森範親音楽監督就任記念公演 レビュー

 5月11日(水)サントリーホールでパシフィックフィルハーモニア東京(PPT)第148回定期演奏会 飯森範親音楽監督就任記念公演が開催された。同楽団は、この4月に「東京ニューシティ管弦楽団」から改称し、同時に飯森が音楽監督に就任し初の共演となった。新しい楽団名のPacific Philharmonia Tokyoは、 Pacific(平和・穏やか、太平洋)、Philharmonia(音楽を愛すること、調和)、Tokyo(東京)がキーワードになっている。

 プログラムの最初は、牛牛をソリストに迎えチャイコフスキーのピアノ協奏曲 第1番。12歳で日本デビューした天才も、いまやステージ姿も美しい精悍なピアニストに。満場の聴衆が飯森の登場を大きな拍手で迎え演奏が始まる。のっけからオーケストラも気迫溢れる熱演を見せ、飯森がスケールの大きな音楽を創っていく。終盤には、牛牛が凄まじいオクターブ演奏を披露しフィナーレ。ソリストアンコールはリスト編曲によるベートーヴェンの『運命』ピアノ・ソロ版。盛大な拍手で前半を終える。

牛牛

 後半は、ショスタコーヴィチの交響曲 第1番。精緻なアンサンブル、迫力の総奏などここではオーケストラの機能性を発揮。興奮冷めやらぬうちに会場は暗転し、この日のハイライトとなるアメリカの作曲家 メイソン・ベイツの「マザーシップ」へ。2011年にマイケル・ティルソン・トーマスの指揮で世界初演、今回が日本初演となった。オーケストラサウンドに電子音を融合させ、4つの即興パートが用意されている。今回は、エレキギター(マーティ・フリードマン)、エレキヴァイオリン(髙木凜々子)、尺八(藤原道山)、ピアノ(牛牛)らがソリストを務めた。プロジェクションマッピングによる視覚的な演出も効果的で、独特なサウンドともに聴衆を非日常的な空間に導くようにエンディングを迎えた。まったく個性の異なる3曲で、オーケストラの魅力を存分に発揮した記念公演となった。今後も、トーマス・アデス、イェルク・ヴィトマンなど、現代作曲家の作品を積極的に取り上げていくことにも注目だ。

メイソン・ベイツ 「マザー・シップ」

 PPTでは、若者向けに年間すべての定期公演を総額¥5,000で聴ける年間パスポートを販売している(席数限定)。さらに飯森が首席指揮者を務める大阪の日本センチュリー交響楽団とオーケストラアライアンスを結び、それぞれの定期公演でこのパスポートを使うことができるという新しい取り組みを始めている。日本のクラシックシーンに新風を吹き込むような斬新なオーケストラの在り方を見せてくれそうだ。

今後の公演

第5回練馬定期演奏会【チケット完売
2022.6/4(土)14:00 練馬区立練馬文化センター

出演
指揮:飯森範親
ピアノ:牛田智大
プログラム
モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」序曲
ショパン/ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 作品11
エルガー/行進曲「威風堂々」第1番 ニ長調
ビゼー/「アルルの女」第2組曲
ラヴェル/ボレロ

第149回定期演奏会
2022.6/19(日)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール

出演
指揮:ステファン・アズベリー
チェロ:横坂源
プログラム
オスバルド・ ゴリホフ/弦楽アンサンブルのための「ラスト・ラウンド」
オスバルド・ ゴリホフ/チェロ協奏曲「アズール」
コープランド/交響曲第3番

パシフィックフィルハーモニア東京
https://ppt.or.jp