1950年代終わりにウィーンで学び、欧米や豪州でリート、オラトリオ歌手として活躍した名バリトン。約1年の延期を経て2021年4月に行われた卒寿記念のステージ(共演ピアニストの小林道夫も米寿の超ベテラン)を収録したDVDが登場。シューベルト「白鳥の歌」の4曲に始まり、シューマンのリュッケルトとハイネの詩による歌曲、子どもの頃から親しんでいたブラームス、そして“協会”も設立したヴォルフのメーリケ歌曲(批評家を揶揄する〈あばよ!〉が絶品)まで、楽譜の入念な解釈と母国語のように美しいドイツ語で魅了する。アンコールの日本歌曲も素晴らしい。
文:東端哲也
(ぶらあぼ2022年4月号より)
【information】
DVD『卒寿記念 川村英司 独唱会/川村英司&小林道夫』
シューベルト:「白鳥の歌」より〈愛の使い〉〈我が宿〉〈漁夫の娘〉〈鳩の使い〉/シューマン:君に捧ぐ、ベルザツァール/ブラームス:過ぎ去りし恋、我が女王様よ/ヴォルフ:「メーリケの詩による歌曲集」より〈祈り〉〈あばよ!〉/岡野貞一:ふるさと 他
川村英司(バリトン)
小林道夫(ピアノ)
収録:2021年4月、豊洲シビックセンターホール(ライブ)
野ばらレコーディング
NREC-38 ¥3300(税込)