第25回 パシフィック・ミュージック・フェスティバル 2014

清々しい感動を与え続けて四半世紀


名指揮者レナード・バーンスタイン(1918〜1990)の提唱で1990年に始まった教育音楽祭『パシフィック・ミュージック・フェスティバル』(PMF)が今年で25回目を迎える。毎年、世界各地からオーディションを経て選ばれた若い演奏家が札幌に集合。世界的な指揮者、演奏家たちと一緒に学び、その経験をオーケストラの演奏などに反映させる。彼らの音楽に向かう真剣な姿が、清々しい感動を与えてくれる。
期間中、札幌芸術の森をはじめ、札幌コンサートホールKitaraなどで公開リハーサル、コンサートが行われるが、なかでもフェスティバルの名物となっているのが「ピクニックコンサート」だ。札幌芸術の森・野外ステージで行われるコンサートは、オープン・エアのクラシック・コンサートとして、日本でもユニークな存在である。今年は8月3日(日)に開催される。
さて、25回目の2014年にはたくさんの注目コンサートがあるが、その中からいくつかを紹介したい。まず「オープニングセレモニー&コンサート」(7/12 札幌芸術の森)。全国から集まった250人のトランペット奏者によるファンファーレに始まり、オスモ・ヴァンスカがベートーヴェンの「エグモント」序曲、バーンスタインの「キャンディード」序曲などを披露する。入場無料なのも嬉しい。

R.シュトラウス生誕150周年

今年はドイツの作曲家リヒャルト・シュトラウス(1864〜1949)の生誕150周年にあたるが、それを記念してシュトラウスのオペラ《ナクソス島のアリアドネ》が上演される(7/18,7/20 札幌コンサートホールKitara)。指揮は沼尻竜典が担当し、ツェルビネッタには天羽明惠、プリマドンナに大村博美、音楽教師に駒田敏章など、実力派歌手たちが集合する。
喜劇と悲劇を同時に上演しなければならなくなった音楽家たちの混乱ぶりを描くこのオペラ、今回の上演で特筆すべきなのは、通常はピットにいるオーケストラが舞台上に位置し、同じ舞台で歌手たちが動き回るという点。「ステージオペラ」という公演スタイルだ。音響に優れたコンサートホールでの上演は、オーケストラの音響の醍醐味と歌の面白さの両方を味わえることになる。
「PMF GALAコンサート」(8/2 札幌コンサートホールKitara)は今年で3回目となる豪華なコンサート。
今年はミラノ・スカラ座ブラス・クインテットから始まり、名取裕子(朗読)、セルゲイ・アントノフ(チェロ)、小山実稚恵(ピアノ)による宮沢賢治の「セロ弾きのゴーシュ」、ダニエル・マツカワ指揮PMFオーケストラと、天羽明惠(ソプラノ)、東儀秀樹(篳篥、笙)、セルゲイ・ナカリャコフ(トランペット)が共演する第1部、ロリン・マゼールの代役として佐渡裕がPMFオーケストラを指揮し、アントノフがチェロ独奏を務めるチャイコフスキー「ロココの主題による変奏曲」、ショスタコーヴィチの交響曲第5番などの第2部、という盛りだくさんなプログラムだ。

大阪・名古屋・東京でも公演

さらに、札幌での公演が終了した後には、佐渡裕の指揮によるPMFオーケストラは大阪(8/5)、名古屋(8/6)、東京(8/7)でも公演を行う。プログラムは『GALAコンサート』の第2部と同じ。札幌まで行けないという方は、ぜひこの3つの公演を聴いてほしい。
また25回目を記念して、Kitaraのある中島公園内にバーンスタインの立像も設置されるという。ドミンゴ・インドヤン(指揮)、ダニエル・マツカワ(ファゴット/指揮)などこの25年の間にPMFに参加した演奏家たちは世界で活躍中である。卒業生たちの活躍ぶりにも注目しながら、25回目のPMFをじっくり楽しみたい。
文:片桐卓也
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年7月号から)

第25回 パシフィック・ミュージック・フェスティバル 2014
7/12(土)〜8/3(木)
札幌(札幌コンサートホールKitara、札幌芸術の森 他) ・函館・奈井江・苫小牧・美唄・旭川

佐渡裕(指揮) PMFオーケストラ(大阪・名古屋・東京公演)
8/5(火)19:00 ザ・シンフォニーホール
8/6(水)18:45 愛知県芸術劇場コンサートホール
8/7(木)19:00 サントリーホール

問:パシフィック・ミュージック・フェスティバル組織委員会 011-242-2211
※フェスティバルの詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
http://www.pmf.or.jp