浅草オペラからタケミツ、昭和の名曲まで
田谷力三や藤山一郎の歌う〈恋はやさし野辺の花よ〉も今は昔、とはいえ石川さゆりや白鳥英美子、秦基博らによって歌われた同曲を耳にした方は多いと思う。浅草オペラがスッペの《ボッカチオ》のアリアを歌謡曲風にアレンジし、それが人口に膾炙して多様なカバーバージョンが生まれることにより、さらに若い世代にもその魅力が広まる。日本人なら誰もが知る歌。〈女心の唄〉の知名度や人気にしても浅草オペラの功績は大きかろう。
あるいは團伊玖磨と武満徹。この両作曲家、言わずもがな「クラシック(現代)音楽」の作曲家として認識されているが、前者の〈花の街〉、後者の〈死んだ男の残したものは〉は「歌は世につれ〜」を地で行く一度聴いたら忘れられない唱歌あるいはポップソングの傑作。
歌謡曲とクラシックの遠くて近い関係性に納得した後は〈知床旅情〉や〈いい日旅立ち〉などの文字通りの「昭和歌謡」を堪能。精鋭集う「アンサンブル・オールウェイズ」(声楽アンサンブル)がそれぞれをじっくりと味わわせてくれること請け合いだ。
文:藤原 聡
(ぶらあぼ2021年12月号より)
2021.12/8(水)18:30 川口リリア 音楽ホール
問:リリア・チケットセンター048-254-9900
https://lilia.or.jp