“感情の旅”を体感するプログラム
第5回仙台国際音楽コンクールピアノ部門の優勝者、ソヌ・イェゴンの演奏が、いよいよ東京でお披露目となる。協奏曲を課題の中心とするこのコンクールは、これまでも、フレッシュであると同時にどこか熟達した部分を持ち合わせた若者が優勝する傾向にあった。今年25歳を迎えるソヌもまた、音楽への純粋さと聴衆を魅了する術の両方を兼ね備えたピアニストだ。
その成熟ぶりは、趣向を凝らした渋い選曲にも表れている。自身の音楽性を包み隠さず聴いてもらおうと言わんばかりに、モーツァルト「ソナタ第10番K330」から始める。前半最後には「強さと弱さ両面の感情を持つ作品で、ずっと演奏したかった」という、リストの「オーベルマンの谷」を据える。後半はロシアもの。演奏会からの季節を巡るように、チャイコフスキーの「四季」より「6月・8月・10月」を取り上げ、ラフマニノフ「ソナタ第2番」へとつなぐ。「感情の旅を経験してほしい」と語るプログラムで、実力を余すところなく発揮してくれるだろう。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ2014年5月号から)
★6月20日(金)・浜離宮朝日ホール
問:朝日ホールチケットセンター03-3267-9990
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