アンサンブルとマスタークラスで次代を担う音楽家を支援
「音楽を届けるべきところに継続的な支援をしたい」という諏訪内晶子の想いにより、2013年からスタートした『国際音楽祭NIPPON』。諏訪内自身が芸術監督を務める4回目の同音楽祭が2016年3月に開かれる。
「音楽祭の偶数回は小規模ということで、教育(マスタークラスやオーケストラとの共演)とチャリティ(復興支援のコンサートなど)を中心に開催しています。第2回では仙台でチャリティコンサートを行いましたので、今回は、気仙沼と名取を訪ねます」
気仙沼(3/5)では桐朋学園大学の学生を交えてシューベルトのピアノ五重奏曲「ます」を弾き、名取(3/6)ではナビル・シェハタ指揮&桐朋学園オーケストラをバックに巽千夏とともにバッハ「2つのヴァイオリンのための協奏曲」を演奏するほか、辻彩奈がメンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲」、上野通明がハイドン「チェロ協奏曲第2番」を弾く。
「協奏曲のソリストは、これまでに音楽祭のマスタークラスを受けた人のなかから選びました。巽さんは、全日本学生音楽コンクール全国大会で第1位をとった、才能のある中学1年生。辻さんは、現在高校生ですが、中学生の頃からマスタークラスに参加しています。上野さんは、マスタークラスに参加した際に、ウィスペルウェイさんから素晴らしいとおっしゃっていただいています。彼は外国で生まれたので、独特な感覚をもっています。私自身、人前で演奏する機会を得ることの苦労を理解していますので、そういう場を作ってあげたいと思いました。学生の頃、アマチュア・オーケストラと共演させてもらった貴重な経験があるのです。将来国際コンクールで活躍する人たちに少しでも場数を踏んでほしいと思っています」
日本で大学生と室内楽を演奏するのは初めてだ。
「私は学生の頃、マールボロ音楽祭でシニアから若手まで様々な演奏家と室内楽を演奏し、それがよい経験となりました。『ます』はこれまでにフランスの音楽祭などで演奏したことがあります。また当日は、チャイコフスキーの弦楽六重奏曲『フィレンツェの思い出』も取り上げます」
マスタークラスは名古屋の電気文化会館で開催される。今回はヴァイオリン部門のみで、諏訪内に加え、バルセロナ・リセウ高等音楽院やパリ国立高等音楽院で教鞭をとるエリック・クランブが講師を務める。
「定期的なレッスンなら系統立てて教えることができますが、マスタークラスでは何事も瞬時に判断しなければなりません。また、レッスンだけではなく、最後に全員出演のコンサートがあります(3/17)。たった1日のレッスンだけでも、大変上手くなる子がいるんですよ。音楽祭でマスタークラスを続けることによって、3年前には考えられなかった協奏曲での共演などができるようになりました」
この音楽祭には固定された開催地というものがない。
「そこが良いところでもあり、難しいところでもあります。東京でもいつか実現したいですね」
取材・文:山田治生
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年12月号から)
第4回 国際音楽祭NIPPON
チャリティ・コンサート in 気仙沼(室内楽公演)
2016.3/5(土)14:00
気仙沼市はまなすの館 はまなすホール
オーケストラ・コンサート in 名取
2016.3/6(日)15:00 名取市民文化会館
マスタークラス(ヴァイオリン)
2016.3/15(火)〜3/17(木)
電気文化会館 ザ・コンサートホール
問:カジモト・イープラス0570-06-9960
http://imfn.jp