今日のクラシック音楽界を牽引するヴァイオリニスト。ギル・シャハムは、完璧なテクニック、比類なき優しさと寛大な心を併せもち、アメリカを代表する巨匠としての地位を不動のものとしている。グラミー賞受賞、そして「ミュージカル・アメリカ」からは年間最優秀器楽奏者に選出され、常に名高いオーケストラや指揮者からソリストとして招かれ、リサイタル活動以外にも世界有数のコンサートホールや音楽祭で活躍する。
定期的にベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ボストン交響楽団、シカゴ交響楽団、イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団、ロサンジェルス・フィルハーモニック、ニューヨーク・フィルハーモニック、パリ管弦楽団、など名だたるオーケストラとのコンサートと共演をしている。また、モントリオール、シュトゥットガルト、シンガポールでは長年アーティスト・イン・レジデンスを務めてきた。その他にオーケストラと共に『1930年代のヴァイオリン協奏曲』と題したプロジェクトの一環で、バーバー、バルトーク、ベルク、コルンゴルト、プロコフィエフなどの作曲家の作品を追求してきた。
使用楽器は、1699年製のストラディヴァリウス「ポリニャック伯爵夫人」。
シアトル交響楽団のシーズン・オープニング・ナイト・ガラにメイン・ゲストとして登場。続いて、マイケル・ティルソン・トーマス指揮サンフランシスコ交響楽団とは、カーネギーホール公演のほか、楽団創設20年記念ツアーに同行し、プロコフィエフの協奏曲第2番の独奏を務めた。この曲は「1930年代のヴァイオリン協奏曲」プロジェクトの核をなすもので、ベルリン放送交響楽団やロンドン交響楽団とも、同プロジェクトの一環でブリテンの協奏曲を演奏した。サンディエゴ交響楽団とは、デヴィッド・ブルースの新作協奏曲を初演。このほか、J.S.バッハ(シドニー交響楽団、ダラス交響楽団)、メンデルスゾーン(東京、カナダ、ルクセンブルク)の協奏曲でソロを任された。さらに、バッハ・アルバムのリリースを機に、シカゴのシンフォニー・センター、ロサンジェルスのディズニー・コンサートホールなど、アメリカ各地で無伴奏ヴァイオリン・リサイタルを開催した。
多くのレコーディングは、数度のグラミー賞、アカデミー・シャルル・クロ・ディスク大賞(グランプリ)、ディアパゾン・ドール、「グラモフォン」のエディターズ・チョイスをはじめ、名高い賞にたびたび輝いている。近年は、2004年に立ち上げた自主レーベルCanary Classicsから、『1930年代のヴァイオリン協奏曲Vols. 1 & 2』、『J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ』を発表。現代音楽の擁護にも情熱を注ぎ、これまでウィリアム・ボルコム、デヴィッド・ブルース、アヴネル・ドルマン、ジュリアン ・ミローネ、ブライト・シェンらの新曲を初演している。
1971年、イリノイ州のシャンペーン・アーバナ生まれ。その後、両親と共にイスラエルに移住。7歳でルービン音楽アカデミーのサミュエル・バーンスタインのもとでヴァイオリンを始め、アメリカ・イスラエル文化財団の年間奨学生となった。エルサレムのハイム・タウプのもとで研鑽を積むかたわら、1981年、エルサレム交響楽団とイスラエル・フィルハーモニー管弦楽団にデビュー。同年、アスペンでドロシー・ディレイとイエンス・エレルマンの指導を受け始める。イスラエルのクレアモント・コンクールで優勝したのち、1982年にジュリアード音楽院の奨学生となり、ディレイとヒョー・カンに師事した。さらに、コロンビア大学でも学んでいる。
1990年にエイヴリー・フィッシャー・キャリア・グラントを贈られ、2008年に名誉あるエイヴリー・フィッシャー賞を受賞。「ミュージカル・アメリカ」は2012年に、シャハムを年間最優秀器楽奏者に選出し、彼の演奏からにじみ出る「特異なヒューマニズム」を称えた。
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