2022年1月の海外公演情報

Musikverein

『ぶらあぼ』誌面でご好評いただいている海外公演情報を「ぶらあぼONLINE」でもご紹介します。海外にはなかなか出かけられない日々が続きますが、“妄想トラベル”を楽しみましょう!
[以下、ぶらあぼ10月号海外公演情報ページ掲載の情報です]

曽雌裕一 編

【ご注意】
 新型コロナウイルス感染の影響により、本欄に掲載した音楽祭や劇場等の公演予定について、今後、重大な変更や中止・延期等の措置が施されて実際の公演内容と異なってしまう可能性も十分あり得ます。その点をご留意いただき、最新情報は必ず各音楽祭・劇場等のウェブサイトでご確認いただきますようお願いいたします。

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 帰国後2週間の待機を覚悟してもヨーロッパ行きにトライしたいというクラシック・ファンの話を最近ボチボチ聞くようになってきたが、観光目的ではワクチンパスポートの交付も難しく、まだまだ現実的な状況ではない。今月取り上げた来年1月の公演あたりから、何とか劇的な変化が起きないものだろうか…。

 その1月、音楽祭イベントとして毎年注目公演が並ぶのはザルツブルクの「モーツァルト週間」。派手ではないが、シルヴィア・シュヴァルツ(個人的にはアーノンクールとの共演が懐かしい)がフィオルディリージを歌う「コジ・ファン・トゥッテ」、オーボエのルルーの指揮で夫人のバティアシヴィリがヴァイオリンの独奏を行うヨーロッパ室内管、サヴァール指揮のモーツァルト後期3大交響曲など、どれも質の高そうな手堅いプロが並んでいる。

 オペラ公演では、ウィーン・フォルクスオーパーでペーター・コンヴィチュニー新演出の「ボリス・ゴドゥノフ」が出る。おそらく2016年にニュルンベルクでプレミエになったプロダクションの手直し版とは思われるが、中型劇場で彼が得意とする手作り感たっぷりの舞台にはやはり興味を引かれる。ちなみに1月には、ハンブルクで「ローエングリン」、ドレスデンで「タンホイザー」、ライプツィヒで「ラ・ボエーム」と長年生き残っているコンヴィチュニーの名演出を観ることができる。

 その他の注目オペラを列挙すると、アン・デア・ウィーン劇場でメッツマッハーの指揮する「トスカ」と、例によってポルポラ「オルフェオ」とリュリ「プシケ」という古楽系の演奏会形式オペラ、ベルリン州立歌劇場旧オーケストラ・リハーサル室でのヤナーチェクの「霧の中の光」(歌曲や室内楽を素材とした編作音楽劇)、ベルリン・ドイツ・オペラのワーグナー「リング」ツィクルス(ヘアハイム演出)とツェムリンスキーの「こびと」再演、ドレスデンのゼンパー2劇場で上演される、イヨネスコの戯曲の処女作にルチアーノ・シャイーが曲を付けた「禿の女歌手」、ライプツィヒ歌劇場の一連のワーグナー上演、バイエルン州立歌劇場でショルテスの指揮するR.シュトラウス「無口な女」とコスキー演出のヤナーチェク「利口な牝狐の物語」プレミエ、クレバッサ出演のミラノ・スカラ座でのベッリーニ「カプレーティとモンテッキ」プレミエ、フィレンツェ歌劇場でメータの指揮する2作品「フィデリオ」と「こうもり」+ファソリス指揮のケルビーニの作品、リセウ大劇場でのクリスティ指揮のヘンデル「パルテノペ」、パリ・オペラ座ガルニエ宮での「フィガロの結婚」、英国ロイヤル・オペラのヘンデル「テオドーラ」といったところ。

 オーケストラ関係では、若干馴染みにくいところもあろうが、まず「ウルトラシャル・ベルリン」の名で毎年開催されている現代音楽祭。本文ではベルリン・ドイツ響とベルリン放送響の演奏会を掲載している。現代音楽という点では、ケント・ナガノがハンブルク・フィルで演奏するヴィトマンの新作オラトリオ「ARCHE」も要注目公演。キリル・ペトレンコ指揮の1月のベルリン・フィルは、チャイコフスキーのオペラ「イオランタ」の演奏会形式上演という彼ならではの選曲。もう一つのプロは現代曲とブラームスの交響曲第2番との組み合わせだが、今シーズンの中では彼の振るブラームスの交響曲はこの1曲のみ。余談ながらアンチ・ペトレンコの人たちから「彼は現代ものが振れないからベルリンでは通用しない!」という評価を以前聞くことがあったが、1月の「フォトプトシス」をはじめとして、現代音楽もけっこうプログラムには組み込んでいる(指揮の難易度は別にあるかもしれないが)。他には、サロネン=NDRエルプフィルや大野和士の振るロンドン・フィルといった注目公演もある。声楽関係では、ビルギット・ニルソンの再来(これは個人的にも賛同できる)とも言われるリーゼ・ダヴィドセンのリサイタルがベルリンやバイエルンの州立歌劇場で行われる。
(曽雌裕一・そしひろかず)

(コメントできなかった注目公演も多いので本文の◎印をご参照下さい)
(ぶらあぼ2021年10月号より)