トッパンホール ランチタイムコンサート Vol.109 周防亮介(ヴァイオリン) 美しき光と影の世界

俊才の美しき妙演を瞬く間に体感

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 トッパンホールの「ランチタイムコンサート」は、2002年から続く若手演奏家の登龍門的シリーズ。目利きのトッパンの審美眼で選ばれた俊才たちが、お昼時に45分ほどのステージを展開する。鈴木優人、河村尚子、三浦文彰、宮田大ほか、過去の出演者には現在最前線に立つ演奏家が目白押し。すなわち聴衆には将来のスターの妙演をいち早く知る喜びがある。

 4月に登場するのはヴァイオリンの周防亮介だ。1995年生まれの彼は、ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクールなど数々のコンクールで入賞し、すでにパリ管弦楽団や国内の多数の著名楽団と共演している実力者だが、当ホールには初の出演。今ここで“弦のトッパン”が指名した点が興味を駆り立てる。また、短時間で魅力をアピールせねばならぬ当コンサートは、プログラムにセンスや持ち味が凝縮される。今回の演目は、イザイの「悲劇的な詩」とサン=サーンスのヴァイオリン・ソナタ第1番。ベルギーの大家によるロマン濃厚な佳品と、ベルギー出身の名手マルシックに献呈された闊達かつ甘美な名品という、フランス=ベルギー派テイストの選曲に個性が反映されている。周防はとにかく音が美しく、流麗にして繊細な中にも芯の通った演奏を聴かせる。その特徴は両曲にピッタリだ。加えて、師の迫昭嘉との2台ピアノによるベートーヴェン(リスト編)「第九」の共演など多彩な活動を行い、トッパンホールでも実績のある有吉亮治のピアノも注目点。特にピアニストにとって超難曲のサン=サーンスのソナタ─なかでも息をもつかせぬ終楽章のコラボ─が実に楽しみだ。

 お昼に短時間で本格的作品と期待の才能を味わえる本公演に、ぜひ目を向けたい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2021年4月号より)

2021.4/14(水)12:15 トッパンホール 
※事前申込制
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 
https://www.toppanhall.com