山形交響楽団の契約首席奏者を務める傍ら、バロックのフィールドでも活躍するヴィオラ奏者・成田寛のソロアルバム。ガット弦使用のためかその音色は滑らか一辺倒ではなく独特の物質的なきめと多様な音色の変化を感じさせ、これがふるいつきたくなるような魅力に富む。表現は親密で極めて抑制されているが、これを起伏に欠けると捉えるのは早計だ。非常に考え抜かれた清新なフレージングは、初めて楽曲に触れるかのような新味を聴き手に味わわせる。上野真のフォルテピアノもヴィオラと完全に一体化していて秀逸、ブラームスの醍醐味ここにあり。併録のヨアヒム作品も佳作。
文:藤原 聡
(ぶらあぼ2021年2月号より)
【information】
CD『ブラームス:ヴィオラ・ソナタ第1番&第2番 他/成田寛&上野真』
ブラームス:ヴィオラ・ソナタ第1番・第2番/ヨアヒム:ヘブライの旋律
成田寛(ヴィオラ)
上野真(フォルテピアノ)
妙音舎
MYCL-00002 ¥3000+税