【CD】一柳慧:弦楽四重奏曲集/フラックス弦楽四重奏団

 60年余という長期にわたって紡がれた、一柳慧の6曲の弦楽四重奏曲。ケージの影響、前衛の旗手から、震災を経て実存的作風への回帰に至る、彼の作曲の変遷の象徴であり、時代の潮流(あるいは懐疑)も自ずと反映される。その広大なパースペクティブを、現代音楽演奏の最先端にあるフラックス弦楽四重奏団による、ライブとは思えぬ恐るべき水準と共感を伴う名演で通観できるのは幸甚。各曲後の拍手が収録されることで、生身の人間(聴衆も含む)こそが音楽という芸術を創造する、という原点を痛感させてくれる。ウイルス禍前夜、一柳のメッセージが我々に突きつけたものとは。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2020年12月号より)

【information】
CD『一柳慧:弦楽四重奏曲集/フラックス弦楽四重奏団』

一柳慧:弦楽四重奏曲 第0番〜第5番

フラックス弦楽四重奏団
【トム・チウ コンラード・ハリス(以上ヴァイオリン) マックス・メンデル(ヴィオラ) フェリックス・ファン(チェロ)】

収録:2020年1月、神奈川県民ホール(小)(ライブ)
カメラータ・トウキョウ
CMCD-15157〜8(2枚組) ¥3000+税