聖夜に響く神秘の音色
クリスマスに相応しい、幻想的な響きに身を浸してみたい。
18世紀初めに開発され、当時の作曲家がこぞってこの楽器のために作品を書くなど、一世を風靡した「グラスハーモニカ」。今年の《紀尾井クリスマス・コンサート》は、今日では演奏される機会の極めて少ない、この楽器の名手である「ウィーン・グラスハーモニカ・デュオ」を迎え、その神秘の音色を堪能する。
グラスハーモニカは、濡れた指でグラスの縁を撫でて振動させることで音を出し、グラスに注いだ水の量で音階を作る。浮遊感と透明感のある音色が魅力的だ。18世紀には、複数のグラスを軸に通して回転させて音を出す、機械式の楽器が発明されて大流行。モーツァルトをはじめとする作曲家達の作品が残っている。しかし、演奏者が指先を痛めやすいことなどから徐々に衰退し“幻の楽器”となった。
共にヴァイオリニストとして活動していたクリスタ&ゲラルド・シェーネフェルディンガー夫妻は1990年代初め、この埋もれた楽器と出会い、「ウィーン・グラスハーモニカ・デュオ」を結成。18世紀のオリジナル作品から現代の前衛作品まで、幅広いレパートリー挑戦を続けている。今回のステージでは、モーツァルト「グラスハーモニカのためのアダージョ」などのクラシック作品からクリスマスにちなんだ名曲、さらに井上静香(ヴァイオリン)ら弦楽四重奏を交えてのアンサンブルまで、多彩に披露。ガラスが生む癒しの音色を、ぜひとも体感してみたい。
文:笹田和人
(ぶらあぼ2013年12月号から)
★12月21日(土)・紀尾井ホール Lコード:33962
問 紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061
http://www.kioi-hall.or.jp