藤岡幸夫(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

絶好調のサッチーがお届けするフェイバリット・プロ!


 誠実な演奏を持ち味とする東京シティ・フィルだが、首席客演指揮者に藤岡幸夫が就任してからさらに熱い魅力が加わった。関西フィルの首席指揮者であり、テレビ番組MCでも明るいキャラクターを見せて、特別な存在感を発揮している。その藤岡が登場する6月の定期は、自身が大好きと公言するイギリスと日本の3曲が並んだ。

 かつてイギリスでも活躍した藤岡は、同国の音楽に深い愛着をもっている。最初はディーリアスの「2つの水彩画」で、弦楽合奏の淡い色彩が美しい逸品。メインはヴォーン・ウィリアムズの大作、交響曲第2番「ロンドン交響曲」。序奏と後奏でビッグ・ベンの鐘の音が模され、のちの舞台や映画音楽を先取りする華麗なオーケストレーション、五音音階による懐かしい響きなど、作曲者の特長を味わえるシンフォニーだ。彼は以前「題名のない音楽会」でも同楽団とともに本作を取り上げて、その魅力を語っている。今回は殊に心のこもった熱演になるはず。

 藤岡は邦人作品にも強いこだわりをもち、特に昨年秋の同楽団との伊福部昭「サロメ」の壮絶な演奏は大評判になった。今回は彼が初演を務め、イギリスで録音も果たした、吉松隆のチェロ協奏曲「ケンタウルス・ユニット」を選択。実に美しく直感的に楽しめる作品で、その魅力を熟知する初演者の指揮で聴けるのは貴重。しかもソリストは、藤岡が「ぜひこの曲で!」と切望した宮田大。いまや国内最高の名手のひとり、宮田の名技と表現力で、どんな世界が作られるのか期待がふくらむ。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2020年6月号より)

*新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、本公演は内容を変更し、無観客でのライブ配信の形式で開催となりました(6/22主催者発表)。詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。

第335回 定期演奏会 
2020.6/26(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 
https://www.cityphil.jp