ユニークで新鮮な“歌”を並べて魅了する
ピアニストの廻由美子が主宰する「新しい耳 テッセラの春 音楽祭」も第24回を迎える。5月17日の第1夜(19:00開演)では、バリトンの松平敬とピアノの中川賢一という現代音楽のスペシャリストの共演で、シューマンとR.シュトラウスから成るドイツ・ロマン派プログラムが組まれた。シューマン作品では、「不思議な角笛を持った少年」「夜の歌」など、演奏機会は多くはないが、味わいのある歌曲が並んだ。シュトラウスからは、テニスンの名作に基づく1897年作曲の長大なメロドラマ「イノック・アーデン」が取り上げられる。原田宗典の日本語訳による朗読とピアノという編成で、3人の男女がつむぐ抒情的な愛の物語である。船乗りイノック・アーデンはアニーと結婚し、幸せに暮らしていたが、船が難破しひとり漂流生活へ。悲嘆にくれるアニーに手を差し伸べたのが粉屋フィリップ。そして10年後、3人の運命は…。松平の巧みな語りで、歌曲、オペラ作曲家シュトラウスのひと味違う側面に光が当たることだろう。
文:伊藤制子
(ぶらあぼ2019年4月号より)
2019.5/17(金)〜5/19(日) 三軒茶屋/サロン・テッセラ
問:オーパス・ワン042-313-3213
※音楽祭の詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
https://www.atarashii-mimi.com/