熱を帯びた旋律とリズムが躍動するハンガリーの二大巨星
元号が明治に変わった翌年の1869年、日本とオーストリア=ハンガリー帝国は修好通商航海条約に調印。今年はそれから150周年を迎え、外交関係開設記念事業が数多く行われる。中でも、ハンガリーを代表するバルトークとコダーイの作品による東京シティ・フィルの定期演奏会は、特筆されるイベントになりそうだ。
バルトークはピアノ協奏曲第2番。ピアノにとって過酷な難曲として知られる本作で、今回ソロを務めるのは小山実稚恵。指揮の高関健が「この人しかいない」と語る小山の名技で、本作の超絶技巧とエネルギーを体験できるのは嬉しい。また、第1楽章は管楽器、第2楽章は弦楽器が中心になるなど、オーケストラのユニークな扱いも注目。
そのバルトーク作品を挟むのが、コダーイの代表作2曲。最初の「ガランタ舞曲」は、次々に現れる舞曲の楽しさと熱気が格別で、思わず興奮を覚えてしまうはず。メインは第2次大戦開戦の1939年に作られた「ハンガリー民謡『孔雀が飛んだ』による変奏曲」。民謡の旋律を用い、華麗なオーケストレーションで楽しく聴ける逸品であると同時に、国内外で広がっていた独裁的な体制への抗議が込められているという懐深い大作でもある。
シティ・フィルと常任指揮者の高関の公演は、毎回明確な成果を挙げて支持を広げ続けている。本公演もあえて「孔雀変奏曲」をメインに据えるなど、明快ながら捻りも効いたハンガリー記念公演になっている。その熱い思いは、充実のパフォーマンスを通して会場を満たすはずだ。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2019年3月号より)
第323回 定期演奏会
2019.3/16(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002
http://www.cityphil.jp/