【CD】モーツァルトの4つのピアノ・ソナタとファンタジー/中井正子

 中井正子については、ドビュッシーやラヴェルの全曲録音・楽譜校訂などのイメージが強いかもしれないが、このモーツァルト・アルバムにより、ウィーン古典派の小粋で闊達な音楽語法を伝えるピアニスト、という印象も新たに持たれることだろう。アルバムは、モーツァルトが母を亡くした直後に書かれた短調のソナタ第8番で始まり、第10、11(トルコ行進曲付き)、12番、そして「幻想曲 K.397」を収録。モーツァルト時代の楽器の響きや様式表現についてのアクティヴな研究成果を取り入れたと思しき、生き生きとした音の立ち上がりと瑞々しいテンポ感に彩られた一枚。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2018年11月号より)

【information】
CD『モーツァルトの4つのピアノ・ソナタとファンタジー/中井正子』

モーツァルト:ピアノ・ソナタ第8番・第10番・第11番「トルコ行進曲付き」・第12番、幻想曲ニ短調K.397

中井正子(ピアノ)

コジマ録音
ALCD-7224 ¥2800+税