アンドレア・バッティストーニ(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団 魅惑のオペラ・アリア・コンサート

感動のクライマックスが延々と続く魅惑の2時間半


 かつて「三大テノール」の競演が一世を風靡したように、時にオペラ・アリア・コンサートは、上質なオペラ公演もおよばないほどの感銘を聴き手に与える。ただし、「時に」と書いたように条件がある。三大テノールのような圧倒的な歌声のシャワーはその一つだが、もっと根源的な条件もある。アリア・コンサートはオペラのクライマックスを集めたもの。心揺さぶられる名場面ばかりなのだから、演奏次第では感動がとめどなく押し寄せる、というわけだ。
 このコンサートがそれに該当することは容易に予想できる。まず、テンションの高いバッティストーニの指揮がある。このマエストロは、作曲家の意図を正確に汲み、大きなスケールで、細部は緻密に、と曲の魅力を幾重にも塗り上げる天才。日ごろ、最も好きなオペラ作曲家はプッチーニで、ほかにヴェルディ、マスカーニ、チレア…と公言するが、その思いに忠実に、好きな作曲家の名作から、ここぞというクライマックスばかりを並べてきた。しかも管弦楽は東京フィル。バッティストーニは首席指揮者として、オペラの経験豊富なこのオーケストラと盤石の体制を築いている。名場面の一つひとつが耀かない可能性など、どうして想像できようか。
 そのうえ、イタリア伝統の発声を継承するマリア・テレーザ・レーヴァとジャンルーカ・テッラノーヴァに、ドラマティックな表現で右に出る者がいない清水華澄、ノーブルなイタリア声の上江隼人というソリスト。歌声のシャワーも最初から約束されている。
文:香原斗志
(ぶらあぼ2018年11月号より)

2018.11/20(火)19:00 横浜みなとみらいホール
問:横浜みなとみらいホールチケットセンター045-682-2000 
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