このマエストロならではの20世紀ロシア音楽プログラム
東京フィルの多彩な指揮者陣にあって、特別客演指揮者ミハイル・プレトニョフが果たす最大の役割は、ロシア音楽の真髄を聴かせてくれるという点だろう。プレトニョフの選曲からは、有名曲ばかりではなく日頃聴く機会の少ない作品も含めて、ロシア音楽の全貌を知らしめようという気概が伝わってくる。
そのプレトニョフが2月に組んだのは、20世紀ロシア音楽プログラム。ストラヴィンスキーの「ロシア風スケルツォ」と、プロコフィエフの晩年の作品である「交響的協奏曲」(チェロ協奏曲第2番)、ストラヴィンスキーのバレエ組曲「火の鳥」(1945年版)が演奏される。
「火の鳥」の組曲版といえば、一般的によく演奏されるのは1919年版だが、後に改訂された1945年版が選ばれているところにプレトニョフの意図がにじみ出ている。というのも、1952年に書かれたプロコフィエフの交響的協奏曲も、やはり若き日の作品であるチェロ協奏曲第1番を改作したもの。こちらは過去の素材を用いた再創造というべきもので、「火の鳥」とはやや事情が異なるにせよ、「若き日の作品を円熟した筆で書き改めた」という点で両作品は共通項を持っている。若年期ならではの旺盛なインスピレーションと、晩年の書法による、時を超えた“一人共作”のおもしろさがあるはず。
交響的協奏曲でソロを務めるのは、2015年チャイコフスキー国際コンクールで第1位のアンドレイ・イオニーツァ。巨匠と新鋭の共演も興味深い。刺激的な一夜となるだろう。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ 2017年2月号から)
第107回 東京オペラシティ定期シリーズ
2/23(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
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