マルティン・ハーゼルベック(指揮) ウィーン・アカデミー管弦楽団 ベートーヴェン交響曲全曲演奏会

 ピリオド楽器によるベートーヴェン演奏も、新たな時代に入ったのかもしれない。そう思わせるコンビ、マルティン・ハーゼルベック指揮ウィーン・アカデミー管弦楽団が、武蔵野市民文化会館でベートーヴェンの交響曲全曲演奏会を行う。
 オルガニストとして名高いハーゼルベックが1985年に創設したこの古楽オーケストラは、かのウィーン楽友協会ホールの主催で定期演奏会を開催。ウィーン古典派やリストの管弦楽作品全集等のCDを多数リリースし、モダン楽器に持ち替えて20世紀作品の演奏も行っている。そして何より新たなベートーヴェンを示唆するのが、独自性の高いそのシリーズ。歴史的な楽器・編成・様式で演奏するだけでなく、音楽学者や音響学者とタッグを組んで、ウィーンに現存するベートーヴェン作品の初演会場の響きを検証し、実際に同会場で録音&公演を行う「RESOUNDプロジェクト」を遂行している。もう1つ、CDを聴いて新たな時代を感じるのが、これまでになくナチュラルな表現。自然なアーティキュレーションとフレージングで運ばれる温かみを湛えた音楽は、鋭角的に突き進む古楽演奏とは違った、良きウィーンの情趣を味わわせてくれる。
 今回は、ホールのリニューアル・オープンを記念した、日本で1回のみのプロジェクト。“通”の支持が厚く、全曲演奏会にも実績ある武蔵野ならではの究極の公演だ。「第九」1回のために世界的ソリストが来日する点や、リニューアル時でこその廉価チケットも大きな魅力。むろん会場は違うが、そのスピリットに触れるのは、得難い体験となるであろう。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ 2017年2月号から)

4/20(木)19:00 第6番&第7番 4/21(金)19:00 第4番&第5番
4/22(土)15:00 第1番・第2番・第3番 4/23(日)15:00 第8番&第9番(完売)
武蔵野市民文化会館
問:武蔵野文化事業団0422-54-2011
http://www.musashino-culture.or.jp/

他公演
4/18(火)いずみホール(第5番・第6番のみ)(06-6944-1188)